半導体製造装置の世界市場が6兆円を突破した。業界団体の国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は9日、2017年の世界販売額が前年比37%増の566億ドル(約6兆円)になったと発表した。17年ぶりに過去最高を更新した。18年も旺盛なメモリー需要や中国市場での積極的な設備投資が継続する見通しで、装置メーカー各社は成長投資を続ける予定という。

半導体メモリーの需要増加に伴い、韓国サムスン電子や同SKハイニックスなど大手メーカーの設備投資が盛んだった韓国市場が前年比133%の179億5000万ドルと、世界最大の装置市場となった。

スマートフォン(スマホ)の販売は頭打ち状態だが、クラウドサービスや交流サイト(SNS)に欠かせないデータセンターの増設は今後も続くとみられる。フラッシュメモリーやDRAMといったメモリー製品の需要が引き続き拡大し、18年も市場規模は拡大を続ける見通し。18年の市場規模は601億ドル(約6兆4千億円)になるとみる。

需要をけん引するもうひとつの要因は中国市場の急速な成長だ。中国当局は多額の資金を投じて国内の半導体産業を育成しており、17年の装置販売額は114億9000万ドル(約1兆2千億円)となり世界3位となった。中国は世界最大の後工程装置市場を形成しており、19年には前工程装置市場でも韓国を抜いて世界首位になる予測だ。

装置各社は18年も工場増強を続けている。メモリー製品の製造に欠かせない「エッチング装置」を手掛ける東京エレクトロンは、18年も好調な市況を見込む。半導体メーカーの寡占化が進んだことで過剰な投資競争が起こりにくくなったことや、流通するデータ量の増加、人工知能(AI)の普及、自動車の電装化などを踏まえて長期的な需要が期待できるためだ。同社の常石哲男会長は「安定した成長期に入った」と述べる。

エッチング装置を製造している東京エレクトロン宮城(宮城県大和町)では18年9月にも生産ラインを増設し、19年度に生産能力を約2倍に増やす計画だ。

半導体製造装置大手のSCREENホールディングスは18年度の設備投資を17年度比で4割増やす。半導体の需要拡大をにらみ、同社の彦根事業所(滋賀県彦根市)に約90億円を投じて生産棟を新設する。18年12月に稼働すれば同装置の生産能力は1.5倍になる。同社の19年3月期の設備投資金額は約200億円を見込む。

半導体検査装置大手のアドバンテストは、検査装置の需要増加に対応するため、19年3月期の設備投資を前年比で1割ほど増やす見込みだ。データセンター向けのメモリー需要や中国スマホメーカーの生産立ち上げを受けて、18年度も継続した需要が見込めるという。吉田芳明社長は「18年も需要の減少は想定していない」と強気の姿勢を示す。

緊張が高まっている米中の貿易摩擦に対して市場関係者は「半導体業界への影響はほとんどない」と静観する。関税が半導体の生産に与える影響は限定的なうえ、半導体は国境をまたいで様々な産業に関わるため、米中ともに大きなリスクを冒す可能性は低いという意見だ。
2018/4/9 16:19
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29153170Z00C18A4X13000/