KDDIの高橋誠社長は5日、東京都内の記者会見で次世代通信規格「5G」やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」のスタートアップに200億円投資すると発表した。スタートアップ向けにはすでに100億円の投資枠を設けていたが、先進企業と一段と連携する。通信事業に参入し自前の経済圏をてこに攻める楽天などとの総合的なサービス競争を勝ち抜く。

 KDDIがコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げるのは3回目で、これまで2件の投資枠はいずれも50億円。5GやIoT、人工知能などのスタートアップへ出資し、自社の通信網を活用しビジネスを拡大してもらう。サービス開発などで組み次世代の通信競争に臨む。

 1日付で就任した高橋社長は「様々な企業がプラットフォームを使ってサービスを作っていくのが今後の姿。KDDIだけでは狭い範囲になってしまう」と強調した。

 高橋社長は、KDDIや傘下企業から人材を派遣して事業をサポートするなど「我々の資産を最大限利用して大きくなってもらう」と中核事業底上げへの戦略を語った。すでに買収し、投資の成功例とされる子会社、IoT通信ソラコム(東京・世田谷)の人脈や知見をフル活用する。

 高橋社長は通信事業への参入を表明した楽天への対抗意識を示した。すでに電子商取引や金融で強みを持つ楽天が、通信という武器を得て経済圏を拡大する。

 「顧客との密着度では(通信や端末を手がける)KDDIが勝っている。楽天の参入までしっかり準備して対抗できる」と高橋社長。エンターテインメント分野などにも注力し「楽しさ」を特色として打ち出していく。

 高橋社長は18年度に非通信事業を「楽天の売上高(約9500億円)の半分超にしたい」と語り、売上高の目標を初めて示した。

 高橋社長はかねて新事業を束ね、田中孝司前社長からバトンを受けた。同社は1月に英会話大手のイーオンホールディングスを買収し、2月に大和証券グループ本社と資産運用業に参入した。ただ非通信事業の育成は途上。通信だけの競争から電子商取引や金融などと融合した顧客の奪い合いが激しさを増すなかでの新体制の船出となる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29053680V00C18A4TJ1000/