サイバーエージェントの藤田晋社長が今最も力を入れているのがインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマTV)」事業だ。将棋棋士の藤井聡太さんの対局を流したり、人気アイドルグループの元SMAPの3人を取り上げたりするなど独自企画で話題を振りまいている。ひんしゅくも恐れず、事業に挑む。現在の同社の主力事業はネット広告だが、藤田氏はどんな将来像を描いているのだろうか。

■動画配信、挑戦は4度目

 ――アベマTVは開局2年。どうして作ったのですか。

 「ネット上に信頼できるメディアを作りたいというのがそもそもの発想。今の消費者はテレビを見なくなりました。テレビ番組が面白くないからではないんです。スマートフォン(スマホ)の普及で、テレビの前に縛り付けられるのが嫌になった人が多いのです」

 「だからこうしたスマホ世代が、いつでもどこでも気軽にニュースでもバラエティーでも、なんでも視聴できるメディアを目指すことにしたのです。ネットでの動画配信事業は実は4度目の挑戦です。メールで動画を配信するなどの試みをしてきましたが、通信インフラがぜい弱だったため失敗しました。動画データを瞬時に送受信できるスマホが登場して、ビジネスの環境がようやく整ってきたのです」

 「メディア事業は一発あてれば大きい。それも参入を決めた大きな理由です。僕が総責任者となって陣頭指揮をとり、オリジナル番組などを制作しています」

 ――社長自身が責任者だと、部下にはどんな人を選ぶのですか。

 「アベマTVは、僕が全ての責任を負う体制を最初からつくりました。だから、いちいち文句を言ってくる人間は要らないんです。僕の要求に満額回答で答えて動いてくれる人材を要所要所に配置しました」

「事業を直接見るのは、これが初めてではありません。レンタルブログサービスの『アメーバブログ』の立ち上げの時も、同じように僕を頂点にした命令系統をつくりました。社員もあのときと同じだと受け止めているようです」

■黒字化への道、頭のなかに

 ――収益面の見通しは。

「現状は赤字です。2018年9月期は部門赤字です。黒字転換する時期など、収益の見通しは私の頭の中には入っていますが、あえて言わないようにしています。今は成長のための種まき時期で、今期は200億円を投じます。16年4月から2年半で500億円を投資する計画です」

 「『黒字化が困難』などと批判されています。それは、逆にいえば他のテレビ局やメディアがそれだけアベマTVの成否を気にしているという証拠でしょう。ネットビジネスは既存のテレビ局や新聞社の発想ではうまくいきません。当社のようなネットを知っている者こそがメディア事業をやらないといけないと思っています」

 ――サイバーエージェントをどんな会社にしたいですか。

 「通信などインフラ系のビジネスには興味がありません。ネット企業は、派手にお金を使って派手に稼ぐというやり方が一般的です。堅実なイメージのあるインフラ系ビジネスとは、価値観が違ってうまくいかないと思うから手を出さないんです」

 「将来はアベマTVを含むメディア関連で売り上げの半分程度を稼ぐ姿が理想です。先日、楽天の三木谷浩史社長が携帯事業の新規参入を表明しました。ゼロからのスタートなのに、自前の通信ネットワークの構築に約6千億円もの巨費をつぎ込むという。この話を聞いたときは、経営者として勇気づけられました。アベマTVで資金を使っているといっても、せいぜい200億円です。ケタが違います」
以下ソース
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO27079370Z10C18A2000000