私の投稿を企業の人事が見ているかも――。経団連の採用広報解禁が3月1日に迫る中、就活生を悩ませる話題のひとつが、写真共有サイト「インスタグラム」や「フェイスブック」など、自身の交流サイト(SNS)への目配りだ。SNSに投稿した写真やコメントが選考を左右することはあるのだろうか。

昨シーズンの就活を経験した国立大4年の男子学生。彼はある出来事がきっかけで、SNSの公開設定を全て「友人のみ」にした。

 それは金融機関のリクルーター面談でのこと。雑談の中で、リクルーターが突然あるミュージシャンの名を挙げて「○○が好きなんですよ」と話したのだ。「○○は、かなりマイナーな存在。これまで日常生活で○○が好きな人とは出会ったことがありません」。

ならばなぜリクルーターはそんな話題を持ち出したのか――。実は男子学生は「ツイッター」でそのミュージシャンについて投稿していた。リクルーターにはアカウントを明らかにしていなかったが、「おそらく私の名前から推測して、アカウントにたどり着いたのではないかと思います」

 探偵(記者)は今春に新社会人となる就活経験者らに「SNS対策」をしたか聞いてみた。

 国立大4年生の女子は「本名で登録していたフェイスブックのアカウントを削除した」。また女子大の4年生は「過去の投稿に不適切な発言がなかったか確認した」という。企業がSNSをチェックすることを想定し、何らかの対策を打った人が一定数いた。

 中にはしたたかな学生もいる。早稲田大4年の女子学生は、不要な投稿を消す一方、海外ボランティアで活動した記事はあえて残した。すると、ある企業の面接で、エントリーシートには書いていなかったこのボランティアについて聞かれたという。エントリーシートでは伝えきれなかった情報をSNSでアピールする作戦が奏功した。

■人事チェックは下火?

 一方、探偵が企業の採用担当者を直撃すると、「選考過程の学生の名前をSNSや検索エンジンで探し、採用の参考資料にすることは一切ない」(大手人材会社)、「選考を受ける学生は多い。正直いってそこまでやる時間がない」(広告会社)など、きっぱりと否定する企業が大半だった。

 「コンプライアンス(法令順守)の観点から、表向きには就活生をネットでチェックする、という動きは下火になっている」。就活コンサルタントの谷出正直氏はこう指摘する。

数年前には、ある電機大手に内定していた国立大の男子学生がホームレスを襲撃した動画をインターネットにアップし、内定が取り消される事件が話題を集めた。企業がリスク回避を狙い、「ネット検索でチェックを入れていた時代もかつてはあった」(谷出氏)。

 今は学生のネット利用のリテラシーも高い。就活生の多くがチェックするネットの掲示板「みん就(みんなの就職活動日記)」でも、熱心に投稿するのは一部の学生に限られるようだ。

 もちろん、企業も本心では気になるところだ。ある電機大手の採用担当者は「応募者全員にはしないが、気になる人がいたらチェックすることはある」と認めた。あるベンチャー企業は「面接の際は『外向き』の姿をつくろう学生が多い。日常の『素』の姿が見たいため、SNSは必ずチェックする」と明かす。
以下ソース
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27354360U8A220C1XS5000/