政府は、16日開かれた衆参両院の議院運営委員会の理事会で、ことし4月に任期満了を迎える日銀の黒田総裁を再任するとともに、副総裁には新たに早稲田大学の若田部昌澄教授と日銀の雨宮正佳理事を起用するなどとした人事案を提示しました。

政府は、16日午前11時から開かれた衆参両院の議院運営委員会の理事会で国会の同意が必要な9機関27人の人事案を示し、このうち日銀の総裁については、ことし4月8日に任期満了を迎える黒田東彦総裁を再任するとしています。

黒田氏は73歳。昭和42年に当時の大蔵省に入省し、国際部門のトップである財務官を経てアジア開発銀行の総裁などを歴任しました。
そして平成25年3月に日銀総裁に就任し、異次元とも呼ばれた大規模な金融緩和を進め、史上初となるマイナス金利政策も導入しました。

しかし、日銀が目標に掲げる2%の物価上昇率の達成時期の見通しは6度も先延ばしされていて、野党側からは、金融政策の転換が必要だとして黒田総裁の交代を求める意見が出ていました。

一方で、安倍総理大臣は「黒田総裁の手腕を信頼している」として、大胆な金融緩和の着実な推進に重ねて期待を示していました。

黒田氏が再任されて5年間を大きく超えて総裁を務めることになれば、昭和31年から8年余り総裁を務めた山際正道氏以来のこととなります。

また、来月19日に任期満了を迎える、岩田規久男副総裁と中曽宏副総裁の2人の後任には、新たに早稲田大学の若田部昌澄教授と日銀の雨宮正佳理事を起用するとしています。

若田部氏は、経済理論や経済学史を研究していて、平成26年に政府が消費税率の10%への引き上げを判断する前に各界の代表などから意見を聞いた「点検会合」にも招かれ、引き上げに反対する考えを示したこともあります。

雨宮氏は、昭和54年に日銀に入ったあと企画局長などを務め、平成22年からは理事として金融政策の立案などを担当し、平成26年に異例の再任をされました。

人事案について、衆参両院の理事会では、国会に提示される前に報道されたのは情報の漏えいがあったのではないかと問題視する意見が出され、政府に対し経緯を調査して報告するよう求めました。

日銀の総裁や副総裁などの人事については、今後、衆参両院の議院運営委員会で所信の聴取と質疑が行われることになっていて、政府は、こうした手続きを経た上で、速やかに国会の同意を得たいとしています。

黒田総裁「金融緩和 粘り強く進める」
日銀の黒田総裁は、16日の衆議院の財務金融委員会で、再任の人事案が16日提示されるという報道もあるが、これまで5年間の金融政策をどう総括するかと問われたことに対し、「2%の物価安定目標の実現に向けて、強力な金融緩和を推進し、日本経済は大きく改善した。物価の面でもデフレではなくなっていると思うが、2%の目標の実現にはまだ距離がある。この目標を実現することは何よりも大事であると考えており、引き続き今の強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが必要だと考えている」と述べました。
官房長官「引き続きかじ取り任せることが最適」
菅官房長官は16日午後の記者会見で、「総裁候補者の人選にあたっては、デフレ脱却という内閣が掲げる重要な政策に理解があり、確固たる信念を持ってこの課題に取り組む方を念頭に検討を行ってきた。黒田総裁は着任以来、大胆な量的、質的金融緩和を主導し、固定化したデフレマインドの払拭(ふっしょく)に向けて大きな貢献をしたと思っており、今日(こんにち)までの実績を踏まえ、引き続き黒田総裁に金融政策のかじ取りを任せることが最適だと判断した」と述べました。

また菅官房長官は、2人の副総裁の人事について「総裁の人事を踏まえ、日銀執行部が一体として高い総合力を発揮できる体制とする観点に立って、適材適所の人選を進めた結果だ」と述べました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180216/k10011331311000.html