ふるさと納税は、「実質2000円の自己負担で豪華な返礼品がもらえる」として大人気の制度。しかし、過熱する返礼品の大盤振る舞いに総務省が待ったをかけたため、制度の転機を迎えている。

 2017年4月、総務省は自治体に対して、返礼品の新たな「ルール」を通知した。まず、返礼率(寄付額に対する返礼品の調達価格の割合)は3割以下が望ましいとした。これまで1万円の寄付に対して5000円相当以上の返礼品がもらえる自治体も少なくなかったが、最大3000円相当が目安になるわけだ。また、金券類や、家電・宝飾品など資産性が高いもの、価格が高額なものは、返礼品として不適切とした。

 これらは強制力のない「要請」だが、返礼品の見直しに踏み切った自治体も多い。2016年度の寄付額が全国1位だった宮崎県都城市は、返礼率を従来の最大6割から3割以下に引き下げた。全国2位の長野県伊那市も、人気だった家電の扱いを中止している。

 消費者にとっては逆風となる変更だが、それでも「2000円の自己負担でその何倍もの返礼品がもらえる構図は変わらない。やらないよりやった方が得なのは間違いない」(ふるさと納税に詳しい金森重樹さん)といえる。

■「改変」にどう立ち向かう? 達人に聞く
――金森さんは、16年は約3000万円、190弱の自治体にふるさと納税したそうですね。ルール改変の影響は。

 以前からお気に入りの自治体の大部分は今のところ大きな変更がないので、17年も継続して寄付しています。17年に大きな変更があったのは2つ。一つは三重県明和町の「ふるなびグルメポイント」。松阪牛の肥育地である明和町に寄付をすると、東京の有名レストランでも使えるポイントがもらえるのですが、この還元率が5月に50%から30%に下がってしまった。私は変更直前の4月に駆け込みで1000万円寄付しました。

 もう一つは、千葉県勝浦市の「かつうら七福感謝券」。勝浦周辺での宿泊や買い物に使える券で、70%の高還元率が魅力でした。16年は1000万円寄付して感謝券で「ロマネ・コンティ」などを買ったりしたのですが、2月に廃止になってしまいました。

──今後の戦略は。

 肉や果物、野菜などの生鮮産品は値段が分かりにくいので、宮崎県都城市など極端に還元率の高かった自治体を除いて影響は限定的とみています。今後は、お得感のある自治体を丁寧に探していくしかないでしょう。例えば、1万円の寄付でコメ20kgがもらえる山形県河北町など、お得な自治体はまだあります。

 一方、感謝券や宿泊券は、遅かれ早かれ3割の横並びになるでしょう。その場合、宿泊だけでなく商店やレストランなどでも利用できるかといった「用途の広さ」や、そもそもの「旅先としての魅力」などを総合的に判断して選びます。

──ふるさと納税を続けますか。

 お得感の低下は否めませんが、やらないよりやった方が得なのは間違いないので消去法的に続けます。むしろ影響が大きいのは少額の寄付者では。1万円しか寄付しない人は、3000円の返礼品をもらっても、自己負担分を引くと得するのは1000円。手間を考えると、やる気が出ないでしょう。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21491010V20C17A9000000