AI(人工知能)が収集・分析した情報を、個人投資家が資産運用に活用できる機会が広がっている。今春以降、証券会社が相次いで個人向け情報サービスを始めた。多くは口座開設者向けなので、証券会社選びのポイントの一つにもなりそうだ。各社のサービスの特徴をまとめた。

 「SNS(交流サイト)の投稿が株価を左右することがあるので使ってみたい」「情報を簡単に探せる」――。岡三オンライン証券が6月に始めた「#カブトレンド」。個人投資家にセミナーで紹介したところ、こんな感想が寄せられた。

■SNS投稿カバー

 ツイッターなど特定のSNSに流れた投稿をAIが分析し、社名などが話題になった頻度を基にポイントを付ける。例えばトヨタ自動車なら「新車」「水素自動車」など、あらかじめ関連付けた単語もポイントに加算。さらに株価の動きも解析してスコアを付け、ランキングにまとめる。

 ポジティブな話題だけでなく、ネガティブな話題で盛り上がった場合もスコアは上がる。ランキングは1分ごとに更新するため、常に「旬な銘柄」を知ることができる。

4月以降、証券会社がAIで分析した情報を個人に提供する動きが相次いでいる。これまで機関投資家向けシステムや投信運用などに活用していたAIを個人向けに“開放”することにより、サービス強化につなげたい考えだ。

 マネックス証券は4月、「AIレポート」の配信を始めた。日米欧と新興国の株式、債券、不動産投資信託(REIT)の今後1カ月の見通しを3段階で評価。各国の経済指標や指数、金利動向などをAIが分析し、世界の景況感を地図で表現する。


AIを使った情報サービスにはこのほか、決算発表資料を分析したり株価動向を分析したりするタイプがある。

 前者の代表はカブドットコム証券が7月に始めた「ゼノ・フラッシュ」だ。約2900社の国内上場企業が開示した決算発表資料を読み込み、リポートを作成する。営業利益の増減要因や、同業他社と比べた占有率などが最短で公表から1分以内に見られる。

■判断は自己責任で

 SBI証券は米国の主要500社が公表した決算情報を日本語で速報する。最速なら開示から数分で配信。従来は人が翻訳するのに1日程度かかったため、「決算内容を織り込んで売買するまでに時間差があった」(AIを提供するモーニングスター株式分析部長の宮本裕之氏)。

 大和証券はAIによる株価予測を提供する。大和総研が開発したAIが3月期企業の通期決算発表を分析、1カ月後に株価上昇が見込める20銘柄を5月中旬に何度かに分けて示した。顧客向けサービスなので銘柄名は公表していないが、20営業日目の終値時点の平均騰落率は東証株価指数(TOPIX)を5.42%上回ったという。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO21689680Z20C17A9PPD000