9月6日、日産自動車はフルモデルチェンジした電気自動車(EV)「リーフ」を発表した。新型リーフの航続距離は400kmで、初代の2倍。西川廣人CEOは「航続距離を競う時代は終わる」として、EVのさらなる普及に自信をみせた。「自動運転」などでも先行する日産の勢いはどこまで続くか――。
EVで航続距離を争う時代は終わる?
「電気自動車(EV)はもう特別な存在ではなくなった。航続距離を競う時代は終わる。これからはどれだけ魅力的な車をつくることができるかが競争で勝つための大きなカギになる」

日産自動車は9月6日、新型「リーフ」を発表。その後に開いた記者懇談会で西川廣人CEOはこう強調した。2010年12月の初代を発売して以来、6年10カ月ぶりとなる2代目で、価格は315万円からだ。

日産の新車発表会といえば、これまで横浜の本社ビルで開くことが多かったが、この日は違った。幕張メッセの2ホールを貸し切り、「ワールドプレミアムイベント」という名前まで付けた。午前中には報道関係者向け、午後には販売店など取引関連向けの説明会を開き、約5000人を招待した。演出も派手で、ステージの床や壁面にグラフィックが投影され、青色のライトが飛び交う中を新型リーフが登場。まるでロックコンサートのようだった。これほど大規模な新車発表会は他社も含めてほとんど記憶にない。

2代目リーフの最大のポイントは、大容量電池を搭載したことで初代に比べて航続距離が約2倍となり、1回の充電で400km走れるようになったこと。西川CEOは「日本では400kmというのは実用的に全く問題ない。EVと意識しないで使っていただけるレベルになった」と胸を張り、航続距離の課題は克服できたとの見方を示した。

また、製品開発担当の坂本秀行副社長は「バッテリーについては、政府や大学の研究機関と長い間基礎研究をしてきたので、そのメカニズムについて相当理解することができた。その結果、バッテリーが保持できるエネルギーの密度を飛躍的に上げることができた」と話した。

しかし、日産は8月8日、そのバッテリー事業を中国の投資ファンドに売却すると発表している。苦労して開発し、他社よりも優位に立っているというバッテリー事業を、なぜ売るのか。その理由は、日産がEV向けのバッテリーが「虎の子の技術」ではなくなると見ているからだ。

「バッテリーの容量は今度、どのメーカーもほぼ同じになるため、バッテリーで競争力を出す時代は終わるだろう。したがって、バッテリーの製造はパートナーと組んでやればいい。それよりも今、重要なのは制御やソフトの技術力を高めてどう自社の特徴を出すか。新型リーフでもその部分の開発の陣容を厚くしたし、今後もさらに厚くしていく」(西川CEO)

中略
初代リーフは累計販売台数が28万台で、当初目標を大きく下回ったものの、日本メーカーの中では「EVは日産」という存在感を示すことに成功した。しかも今年に入って、欧米の自動車メーカーがこぞってEV開発に力を入れ、次々にEVを発売。米テスラは今年7月に量産型EV「モデル3」を発売し、受注はなんと50万台にのぼった。まさに「EV時代」が到来しつつあるように思える。

日産はこうした動きを捉えて、2代目リーフでEVのリーダーとしての地位を確固たるものにしようというわけだ。しかし、販売台数目標について、西川CEOは具体的な数字を明らかにしなかった。

「われわれがあまり台数を言ってもしょうがない。これまでの経験から信頼の土壌ができており、目算としてグローバルで2倍は間違いなく、日本は3倍ぐらい行けると思っている」(西川CEO)

2016年度の販売実績は国内約1万2000台、グローバルでは約4万7500台だった。果たして、西川CEOの目論見通り、新型リーフがユーザーに受け入れられるかどうか、今後の動向に目が離せない。
http://president.jp/articles/-/23128