事前に予想された通りの困った状況になっている。開会中の東京都議会についてだ。

 築地市場の豊洲への移転問題で、都は豊洲に追加工事をする費用などを盛り込んだ補正予算案をまとめ、都議会に提出した。5日の本会議で可決される見通しだ。

 土壌汚染に対する都民の不安を払拭するためにも追加的な対策は必要だ。そのうえで、早期に豊洲に市場を移さないと、築地市場の跡地を東京五輪に備えた輸送拠点として活用できない。この点で補正予算そのものは妥当だろう。

 問題は都議選の結果、最大会派になった都民ファーストの会の姿勢である。議会での質疑では小池百合子知事の主張をなぞったうえで、「高く評価する」などと繰り返す場面が目立った。

 知事が示した方向性は正しいとしても、築地を具体的にどう再開発するのかなど、知事にただすべき点はたくさんあった。築地再開発が豊洲で予定されている商業施設にどんな影響を及ぼすのかについても、もっと聞きたかった。

 小池知事が都議選の直前にまとめた今回の方針の決定過程も不透明だ。知事が外部の顧問と相談して決めたといわれているが、その記録は文書で残っていない。知事が掲げる「都政の見える化」に明らかに逆行している。

 こうした点を事実上棚上げして、「知事を評価する」といわれても到底、納得できない。

 地方政治は国政とは異なり、首長と議員がそれぞれ住民から直接選ばれる二元代表制になっている。与野党にかかわらず、知事に対して是々非々で臨み、監視機能を果たさなければ、議員の存在意義はないに等しい。

 都民フは所属している議員に対する取材を制限していたこともある。新人議員が多いためのようだが、これにも違和感があった。

 知事の顔色をうかがいながら、差し障りのない質問を議場で繰り返すことが「都民ファースト」なのか。これでは「小池ファースト」にすぎないだろう。
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO20756440U7A900C1EA1000/