世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国のカタールが、アラブ諸国から国交断絶を突きつけられて5日で2カ月。中東情勢の緊迫にもかかわらず、
カタールのLNG輸出への打撃はほとんどなかった。LNGビジネスを手掛ける日本の商社はいち早く「カタール詣で」に乗り出して“絆”をアピールし、
商機拡大のチャンスを虎視眈々(たんたん)とうかがい始めた。(上原すみ子、平尾孝)

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 「(LNG)ビジネスをしっかり継続すると、(カタール首脳に)直接伝えることに意義がある」

 大手商社首脳はこう打ち明ける。

 カタール産LNGはアラブ諸国を経由せず、専用船で直接積み出されるため安定的に生産・輸出され、価格競争力も高い。

 丸紅の国分文也社長は7月中旬、カタールのLNG開発事業に参画する日本企業の先陣を切って現地を訪問。三井物産の安永竜夫社長もこのほど
カタール国家元首のタミム首長と会談した。

 同じLNG開発事業に参画する米エクソンモービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどの首脳も大挙してカタールを訪問。各社のカタール詣では
“隠密”だったが、日本の商社と海外の資源会社が現地で鉢合わせするなど、カタール産LNGへの世界の関心の高さが浮き彫りになった。

 日本は年1190万トンをカタールから輸入する「得意先」だ。このため、東京電力福島第1原子力発電所事故後に日本の全原発が停止し電力不足に
陥った際には、カタールが火力発電燃料のLNGを優先的に日本に供給した。

 ただ、日本政府はアラブ諸国との資源外交も重視。サウジアラビアから石油を最も多く輸入しているほか、国際石油開発帝石は、アラブ首長国連邦
(UAE)アブダビと油田権益の延長交渉に入るからだ。日本はカタールとアラブ諸国の間で“神経戦”を強いられそうだ。

 一方、岩谷産業はカタール産の産業用ガス「ヘリウム」を中国やアジア各国に販売。従来は陸路でカタールからUAEに運び、大型コンテナ船に
積み替えていたが、断交で全て海上輸送に切り替えた。これにより物流コストが大幅アップし、アジア向けの価格を30〜50%値上げした。

 また、コマツは「サウジとカタールの国境付近は緊張が高まっており、輸送ルートの変更を検討している」(野路国夫会長)という。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170806-00000059-san-bus_all