スマートフォンに押されていたゲーム専用機がにわかに盛り上がってきた。夏休みを前に、ある家電量販店で、10代の少年が肩を落としてつぶやいた。「ここでも売れ切れている」。

目当ては任天堂の新ゲーム機「ニンテンドースイッチ」。今年3月の発売以来、100万台の大台を超え、目下、品切れ状態が続いている。7月21日発売のソフト「スプラトゥーン2」とハードとのセットも、予約開始初日に受け付けを終了したサイトがある。ある量販店の担当者は「品薄は年内いっぱい続くかもしれない」と明かす。

 ゲーム業界に詳しいファミ通グループの浜村弘一代表は、「この勢いはかつての『Wii』に匹敵する」とみる。株価を見ても、任天堂の時価総額が5兆円を超え、Wiiが発売された2006〜07年をほうふつとさせる。

 任天堂の“勝利の方程式”は、自社ゲーム機を普及させ、ソフトの販売で利益を稼ぐというものだが、その基本に立ち返ったことがヒットの要因になった。ソフト不足で苦戦した「Wii U」(12年発売)の教訓を生かし、今回はハードの発売と同時に、ソフトも「ゼルダの伝説 ブレス・オブ・ワイルド」(任天堂)をはじめ、「マリオカート8」(任天堂)、「モンスターハンターダブルクロス」(カプコン)などの主力ソフトの発売予定を公表してきた。9月には、ポケットモンスターシリーズの「ポッ拳」発売を予定。「ソフトのラインアップが戦略的で、ハードを購入したユーザーが継続的に遊ぶ仕組みをつくった」(浜村代表)。

任天堂のゲーム機はファミリーに強いことで定評があるが、「ゼルダの伝説」ではコアゲームファンを取り込んだのもヒットを後押しした。ゲームを最後までクリアしたときに出るエンドロールに、制作総指揮の一人として、15年7月に亡くなった岩田聡前社長の名前があるのも、ゲームファンの間で大きな話題になった。

勢い持続が課題

 スイッチ以外にも、大型ヒットの予感がある。その代表格がスクウェア・エニックスの「ドラゴン・クエスト11 過ぎ去りし時を求めて」。7月29日に任天堂の携帯用ゲーム機「ニンテンドー3DS」とソニーの据え置き型ゲーム機「プレイステーション(PS)4」向けに同時発売される。

 同社はドラクエ30年の集大成として広告を積極投入する計画だ。100万本を売り上げればヒットといわれるゲーム市場で、開発陣は400万本と強気だ。スイッチ向けソフトの販売も視野に入っている。

 ただ、ユーザーは移り気で飽きやすい。昨年、大ブームになったスマホゲーム「ポケモンGO」の失速などはその例だ。スイッチも人気ソフトを継続して出し、飽きさせない戦略が問われる。
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