富士フイルムは研究開発や海外の営業拠点を拡充し、ディスプレー材料の用途開拓に乗り出した。主力の薄型ディスプレー(FPD)向けTACフィルムに加え、ヘッドアップディスプレー(HUD)など車載用途や有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を搭載するスマートフォン用に提案する。ディスプレー材料事業の10%にとどまるTACフィルム以外の売上高比率を、2019年に30%に引き上げる。

 富士フイルムは4月に、従来のFPD材料事業部をディスプレー材料事業部に改称。FPD向けが主体だった研究拠点もテーマを絞り込み、あらゆる成長領域を育てる体制を整えた。また、ドイツ・デュッセルドルフに駐在員事務所を開設。16年に設けた米国事務所と併せ、自動車・スマホ大手に材料の優位性を訴求する。規格づくりの段階から参画し、業界標準を勝ち取る。

 例えば自動車向けの場合、フロントガラスにあらゆる情報を表示する用途にはフィルムを塗工する既存技術を応用する。同時に欧州の自動車大手がけん引するHUDや米国を中心に加速する電子ミラーなど“次世代コックピット”を視野に技術を底上げする。ベンチャーを含む国内外企業との業務提携やM&Aも積極的に検討する。

 一方、スマホ向けはタッチパネル用に酸化インジウムスズ(ITO)を加工したフィルムや狭額縁化に寄与する加飾フィルム、映り込みを抑える反射防止フィルムなどを重視する。いずれも近く発売される有機ELディスプレー搭載機種に採用が決まり、18年以降に各社が投入する新機種への採用が濃厚。早期に品ぞろえを充実し、拡販に弾みを付ける。

 主にTACフィルムを手がける子会社の富士フイルムオプトマテリアルズ(神奈川県南足柄市)の3工場と、富士フイルム九州(熊本県菊陽町)で生産する。TACフィルムの生産は足元で8割稼働と余裕があるため、追加の投資はせず既存のラインを改良し新製品の生産に充てる。FPD材料の15年度売上高は約1000億円だった。

日刊工業新聞電子版 4/30(日) 8:30配信
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