>>131
(続き)
 例えば、教育学でいうと「発達」や「アイデンティティー」「学習者の権利」。
他の分野でも「民主主義」や「市場の競争力」などたくさんあります。学者が目の前の現実や理想に
意味と理論づけを与えたものが一般に普及し、社会の仕組みや人間の生き方を説明する
日常用語になっていく。いわば学問が国民みんなのものになっていく過程があります。

 ――改めて、学術会議の役割とは何でしょうか。

 政治や行政への貢献は、学問が果たすべき役割のごく一部に過ぎません。
日本学術会議法前文には「わが国の平和的復興、人類社会の福祉」や
「世界の学界と提携して学術の進歩に寄与する」という使命が記されています。

 放っておくと狭い専門に閉じこもりがちな研究者のコミュニティーにとって、
学術会議は大きな役割を果たしています。
分野を超えて様々な問題を議論する唯一無二の場といっても過言ではない。
各分野を牽引(けんいん)する学者が集まり、分野を超えた多角的な視点で
学問上の問題や社会課題を話し合うことは、各分野の研究のあり方にも大きな影響を与えています。
遺伝子工学や人工知能(AI)などの科学技術と社会の関係など、
学術会議の貢献を必要とする課題も増えています。

 首相のブレーンを務める特定の学者や、個別の政策のためにつくられる
内閣や各省庁の審議会や有識者会議と、
様々な学問領域をほぼ網羅している日本学術会議とでは、
目的や使命が違い、位置づけもまったく違います。
学術会議は、政権に批判的な人を含めて
議論をすることができるからこそ意味があるのです。(以降登録記事)

ttps://www.asahi.com/articles/ASNC47R32NBVUCVL016.html