三菱グループに「落ちこぼれ企業」続出、最強エリート集団の大ピンチ
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ダイヤモンド編集部 浅島亮子:副編集長 2020.9.28 4:45
『週刊ダイヤモンド』10月3日号の第一特集は「三菱の野望」です。国内最強のエリート集団、三菱グループが創業150周年の節目に緊急事態に陥っている。三菱「御三家」がそろって業績不
振に陥ったことでグループの求心力は低下。三菱「財閥」は創業以来最大のピンチを迎えている。

三菱自動車の救済をめぐり
乱れた「御三家」の足並み
「三菱重工業だけではなく、いつか三菱UFJ銀行が逃げることだってあり得るのでは」――。
 三菱自動車の中堅社員は、グループの重鎮である「御三家(三菱重工業、三菱商事、三菱UFJ銀行)」の三菱自支援の足並みがそろわないことへの懸念を明かす。
 2004年にリコール隠しで揺れる三菱自の再建の音頭を取ったのは、三菱重工だった。だが、自社の懐事情が厳しくなるにつけ、ビジネス上の関係がほとんどない三菱自と距離を置くように
なる。ついに18年、三菱重工は保有する三菱自株を三菱商事へ売却し、支援の輪からほぼ足抜けした。
 一方の三菱UFJ銀は、21年3月期に3600億円もの巨額赤字に転落する三菱自に対して、過保護なまでのお膳立てをした。3000億円を金融機関8行からかき集める先導役を担ったのだ。
 ただし、ここで注目すべきポイントがある。
 総額3000億円のうち三菱UFJ銀が拠出したのは約900億円にすぎず、三井住友銀行、みずほ銀行、日本政策投資銀行の3行からも400億〜500億円を引き出している。
 三菱UFJ銀の融資額が突出しているわけではなく、メインバンクとして負う責任以上の金は出さない姿勢にも映る。だからこそ、冒頭の三菱自社員は支援の本気度に疑いを持っているのだ。
 頼みの綱は、三菱商事ただ一社である。その三菱商事とて、三菱自の経営不振が主因となり、21年3月期に商社業界の利益首位の座を伊藤忠商事に明け渡す見通しだ。三菱商事は、逝
去した益子修・三菱自前会長(三菱商事出身)の後任を派遣しない方針。自動車業界において存在価値が小さい三菱自への過度な支援には迷いも見える。
 三菱自を巡る御三家の対応は、「鉄の結束」を誇るグループ瓦解の序章にすぎない。

三菱UFJ銀も首位陥落
三井住友銀「国内営業力」の復活
 首位陥落は、銀行業界でも起きた。20年3月期に三井住友フィナンシャルグループ(単体は三井住友銀)が三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG、単体は三菱UFJ銀)を抜き、純利益ト
ップに躍り出たのだ。
 MUFGの敗因は、買収した東南アジアの銀行の減損処理で多額の損失を計上したこと。いわば敵失での勝利に、三井住友銀の行員は「瞬間風速の勝利にすぎない。海外では、三菱のブ
ランド力も旧東京銀行時代のネットワークも強く、MUFGは底力がある」と言う。
 だがそんな三井住友銀が自信を深めているのが、国内営業力である。もともと行員1人当たりの利益率が高いなど経費率では三菱UFJ銀を圧倒してきたが、店舗の小型化やデジタル戦
略などの改革の先行により、事業効率のアップに拍車が掛かっているのだ。
 そして最近では、これぞ三井住友銀の「営業力の復活」と業界でささやかれているのが、トヨタ自動車グループ向けの融資拡大の方針である(特集『トヨタ「一強」の葛藤』の#3『トヨタ最大
のアキレス腱、系列サプライヤー3.8万社の救済計画に死角』を参照)。