https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61480770U0A710C2000000/
[FT]トランプ大統領のめいが暴露したこと
2020/7/14 14:50日本経済新聞 電子版 Financial Times

米国人は、トランプ大統領のめいであり、このたび一族の殺伐とした回顧録を著したメア
リー・トランプ氏が、叔父と同類の人間なのか知りたいと思うだろう。答えはおそらくノ
ーである。本書の著者は優れた文筆の才を持ち、臨床心理士でゲイだからだ。
ただ著者の執筆の動機については、お金が欲しいのか仕返しなのかと疑問を抱くかもしれ
ない。トランプ大統領の兄で、アルコール中毒のため42歳で亡くなったフレディー氏の娘
である著者が、兄のフレッド・トランプ3世と共に祖父の遺産相続人になれなかったことは
よく知られていることだ。

祖父が亡くなった際、著者と兄は存命中のおじ、おば4人やいとこらと骨肉の争いを繰り広
げ、一族について口外しないことなどを条件に、祖父の遺産の中からわずかばかりのものを
得た。一族は今も裁判所に対し「Too Much and Never Enough」(あり過ぎるものと足りな
いもの=邦訳未刊)と題された回顧録の出版差し止めを命じるよう求めている。しかしそれ
は少々遅すぎたようだ。

本書は著者が生まれるはるか以前の1930年代から始まる。当時のトランプ家は家長であるフ
レッド・トランプ・シニア氏と、英スコットランド生まれの妻メアリー・アン・トランプ氏
が支配していた。ニューヨーク市のクイーンズやブルックリンで集合住宅を開発・運営して
いたフレッド氏は、子どもたちに一切関心を持たなかった。

本書の記述の大半は、フレッド氏夫妻の長子でトランプ大統領の姉にあたるマリアン氏から
著者が聞いた話で構成されている。著者の言葉を借りれば社会病質者(ソシオパス)だった
フレッド氏は、様々な方法で子どもたちをいじめ、放置していた。病気がちの母親は影の薄
い存在だった。