米メディアによると、マティス前国防長官は3日の声明で、全米で広がる抗議デモに関して
「3年間にわたる成熟した指導者の不在が引き起こしたものだ」と断じ、トランプ氏を痛烈
に批判した。「我々の対応に軍事を持ち込むほど米軍と市民社会に誤った紛争を生む」と語
り、デモ鎮圧に向けた連邦軍動員に慎重であるべきだとの立場を強調した。

黒人差別をきっかけとした暴動に対処するため連邦軍は過去に何度も州に派遣されたことが
あるが、西ミシガン大のトレイシー・ブラム教授は「軍派遣が大きな政治問題になったとい
う事例を思い出せない」と語った。暴動を鎮圧できない州が連邦政府に派遣を要請するケー
スが大半で「連邦政府から積極的に派遣の可能性をちらつかせるのは異常だ」という。

トランプ氏はこれまでも米軍の政治利用を疑わせる言動を繰り返してきた。メキシコとの国
境からの不法移民の流入を防ぐとして米軍を派遣し、国防予算を壁建設に振り向けた。2019
年の独立記念日では大統領が控えめに振る舞う慣習を破り、式典に戦車や戦闘機、軍楽隊を
動員して国威発揚を図った。一方で選挙公約のシリア撤収に反発したマティス氏は辞任に追
い込まれた。

ダニエル・デービス元陸軍中佐は米軍の政治利用に伴うリスクは、軍が客観的な情報を大統
領にあげなくなることだと指摘する。トランプ氏はイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」
の司令官の殺害を突然指示し、全面戦争の瀬戸際まで対立を深めたことがある。こうした独
断リスクが今後も高まりかねない。