https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58758240S0A500C2TCR000/
[FT]流動性対策に踊る市場 5兆ドル支援策も支払い不能リスク
ジリアン・テット 北米 FT commentators 2020/5/6 0:00日本経済新聞 電子版
Financial Times

4月の最終週に、米国から相矛盾する2つのシグナルが発信された。経済関係のニュースは
悲惨だった。米国の国内総生産(GDP)は第1四半期(1〜3月期)に前期比年率換算で4.8%
減少し、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「中期的な経済見通しに対する多大な
リスク」があると警鐘を鳴らした。英調査会社オックスフォード・エコノミクスは今、今年
上半期のピークから大底にかけて米国のGDPは12%減少すると予想している。これは2008年の
金融危機時の経済縮小の3倍にのぼる強烈な景気悪化だ。

■国債・地方債市場の凍結防ぐ

・・・もしムニューシン米財務長官が正しければ、この流動性対策のおかげで、ロックダウ
ンが終わった時に企業は勢いよく復活を遂げるはずだ。金融界には、この見方に同意する人
もいる。投資助言会社デビア・グループの創業者ナイジェル・グリーン氏は「投資家が20年
下半期と21年の動向に目を向けつつあるなか、世界の株式市場は力強い回復を遂げそうな様
相をみせている」と話している。

しかし、新型コロナ危機が深刻なソルベンシー問題も生んだと考えるのであれば、このよう
な楽観論は見当違いに思える。

■膨れ上がるゾンビ企業
■米政府は景気回復を主張するが…

破産専門弁護士が筆者に見せてくれた内々の試算によると、一般的な米企業の約半分が5月に
予定している家賃を払えないという。シティのキング氏は「効率性を追求した結果、今の経
済は債務の連鎖に満ちている」と述べた。またロックダウンがさらに長期化すれば、5兆ドル
の資金をもってしても食い止めることができないほどの「指数関数的」な破綻の波が押し寄
せると警告している。