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コロナ禍で見えた米国の弱さ、ノーベル賞学者スティグリッツ氏が考える「新たな秩序」
2020/05/06 09:48

全米の感染の中心地、ニューヨーク市に住むスティグリッツ氏に電話取材し、考えを語っ
てもらった。(編集委員 鶴原徹也)

感染被害最悪のアメリカ

ひと月以上、人との接触を避け、自宅に籠もっています。
この間、ニューヨークでコロナ禍が劇的に広がり、多くの命が失われている。健康の優れ
ない人、貧しい人に対して特に過酷です。
米国の甚大な貧富格差は近年、知られるようになりました。健康格差として露骨に表れて
います。公的医療保険制度が整っていないためです。米国は健康を手にする権利を明確な
基本的人権として認めていない例外的な先進国です。

トランプ大統領は今回、初期段階で新型ウイルスを巡る科学者の警告に耳を貸さず、対策
を講じなかった。重大な過ちです。避けられた死は多くあったはずです。
実は、トランプ氏は大統領になり、米疾病対策センターの予算を削りました。感染症を含
む疾病の危険から国民を守る、国の研究機関です。更に、オバマ前政権によって国家安全
保障会議に設けられた疫病対策部局を解体した。まさに今回のような危機に備える国の体
制を弱めてしまったのです。

世界一豊かな米国ですが、コロナ禍で露呈したのは、医療現場に人工呼吸器・防護服・マ
スク・検査薬などの必需品が欠如しているという惨めな現実でした。
政権は国内総生産(GDP)のほぼ1割に当たる2兆2000億ドルもの巨額支出を決め
るなど、経済対策に乗り出しています。