いろいろと課題を抱える三菱重工。宮永社長、どうします?
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2018年06月20日
「『事業持ち株会社』、今後の経営を担う人たちが検討している」
 化石燃料に対する逆風、苦戦する国産ジェット旅客機「MRJ」開発など、三菱重工業の経営が踊り場を迎えている。2020年度に売上高5兆円(17年度4兆1108億円)を目指す中期経営計画の
ハードルは低くない。組織力で乗り切れるか―。「事業持ち株会社」への移行も視野に入れる宮永俊一社長に今後の戦略を聞く。

 ―主力のガス火力発電事業の先行きは。
 「当初2年で需要は回復すると見ていたが、もう少し低迷は続きそうだ。ガスタービンの設備投資に慎重だったことが幸いし、逆風下での減産対応力は米ゼネラル・エレクトリック、独シーメンスを上
回っている。我々が強いアジア市場の冷え込みは欧州よりも小さく、相対的に優位なポジションにある。ガスタービンの効率の高さでは明らかに我々が勝っている」
 ―トルコ・シノップ原子力発電所計画以外にも原発輸出を進めていきますか。
 「パリ協定の50年目標を達成するには原子力は必要。第3世代プラス中型加圧水型原子炉(PWR)『アトメア1』の需要は大きい。フランス電力会社(EDF)とのトップ同士の交流を含め、日仏連携
は非常に順調だ」
 ―三菱航空機の債務超過解消に向けた資本増強策は。
 「(債務株式化などで)三菱重工が埋めてでもやり切る。ステークホルダーと話し始めており、市場の信頼を得られる透明性を持った形で資本増強する。(小型ジェット機の)市場は冷え込んでおり、
営業は長期目線で考える。MRJ90の型式証明取得に向けて大きな問題はない」
 ―航空自衛隊のF2戦闘機の後継機をめぐる、日本企業の国際共同開発への参画意義をどのように考えますか。
 「日本主導でやるべきだ。組み立てだけではなく、裾野産業にも波及しないと日本の防衛産業の足腰が弱る。部品産業は非常に大切だ。中堅企業が弱り、業種転換するのを恐れている」
 ―19年1月の丸の内への本社移転を機に組織体制を見直します。
 「日本、米国、東南アジアなど地域戦略とグローバル戦略を明確にする。『事業持ち株会社』の感覚だ。防衛・宇宙などを三菱重工に残しつつ、事業会社に委譲した権限をグループ本社が統治する。
今秋公表するべく、今後の経営を担う人たちが検討している。新しい考え方をどんどん反映したい」
 ―18―20年度にM&A(合併・買収)などで売上高4000億円を上積みする計画です。対象のイメージは。
 「すぐに収益に反映され、サービスを含めた事業だ。従来、日本の産業・エネルギー政策に沿い『MRJ』や最新鋭発電実証設備など、まっさらな状態から事業をつくるグリーンフィールドに大きく投資
してきた。投資回収サイクルの短い事業を増やさないとポートフォリオ上良くない」
(聞き手=鈴木真央)