「自分は指揮官。お金のことは部下に任せていた。現金配布は部下がやったことで、了承はしていない」。
平成26年2月の東京都知事選をめぐり選挙運動員に現金を配ったとして、公職選挙法違反(運動員買収)罪に問われた元航空幕僚長、田母神(たもがみ)俊雄被告(68)の公判が1日、
東京地裁(家令和典裁判長)で開かれた。検察側による被告人質問が行われ、田母神被告は改めて無罪を主張した。

 この公判の争点は、選挙を手伝った陣営の運動員に対して元陣営幹部が行った報酬配布を、田母神被告が了承していたかどうか。
検察側は「了承があった」として、田母神被告も共謀関係にあったと指摘。一方、弁護側は「了承はない」と無罪を主張している。

 11月17日の公判では弁護側による被告人質問が行われ、田母神被告は「運動員への報酬支払いを元陣営幹部から提案されたとき、あまりに多額だと感じ、中止させようと考えた。
自分では了承したつもりはない」と主張。ただ、運動員に選挙後に報酬を渡す行為が違法だとは知らなかったとして、「自分の知らない間に報酬が配布されてしまっていた。
一度支払ったお金を『返してくれ』とはいえないので、『仕方ないな』と受け入れていたのは事実だ」などとも話していた。

 田母神被告は検察側の被告人質問で、「あなたは当時、政治団体の代表だった。
最終的な決裁権はあなたにあったはずだ」と指摘されると、「それはその通りだが、元陣営幹部から『お膳立て通りに踊ってくれ』といわれ、踊っていただけだ。
お金のことは部下がきちんとやってくれると思っていた」と主張。

 また、金銭の扱いをめぐるメールが田母神被告や元陣営幹部らの間で共有されていたことについて、
「金銭は自分が判断することではないと考えていたので、そうしたメールが届いても注意を払わず、パスしていた」などと話した。

 さらに検察側は「立候補時に選挙管理委員会から、違法行為などをまとめた手引きが配布されたはずだ。自分が立候補するに当たり、選挙ルールを学ぼうとは思わなかったのか」などと問われると、
「当時は忙しく、手引きなどは全く確認しなかった」と話した。

 この事件では、元選対事務局長、島本順光(のぶてる)被告(70)が同罪で公判中。鈴木新(あらた)・元会計責任者(58)や報酬を受け取った複数の運動員らには既に有罪が言い渡されている。

 検察側の冒頭陳述によると、田母神被告は選挙運動の報酬として島本被告に200万円を渡したほか、島本被告ら陣営元幹部と共謀し、複数の運動員に計280万円を渡したとされる。
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