身近な水場で見つかるアメリカザリガニは外来種だ。
魚や虫など在来の生き物を食い荒らす厄介者を、駆除する試みもある。
捕まえるだけでも楽しいけれど、ちょっともったいない。
せっかくだから、食べてみませんか?

8月の青空の下で、子どもたちの歓声が響いた。
「とれた!」「釣れたー!」

神奈川県小田原市の田園地帯。
造園業の沖津昭治さん(75)が在来種のミナミメダカなどを守ろうとつくった水田ビオトープに、
家族連れら約60人が集まり、ザリガニとりが始まった。
主催の市民団体が用意したのはごく簡単な仕掛けの釣りざお。
エサのスルメを固定する針金と重りをつけた糸を、長さ2メートル弱の細い竹棒に結んだだけだ。

小学生らが次々と釣り上げる。
市内から来た平井謙真くん(4)も、初めはこわごわ見守るだけだったザリガニを、トングでつかめるように。
バケツに入れて回収するため、あちこち走り回った。
父親の真吾さん(39)も夢中で糸を垂らし、照れ笑いしながら「子どもはほったらかしです」。

アメリカザリガニの原産地は米国南部。
日本には食用ウシガエルのエサとして1927年に持ち込まれた。
田んぼや流れの穏やかな水路などにすみ、汚れた水にも耐えられる。
繁殖力も強く、日本全国に広がった。
メダカなどの小魚のほか、ホタルやトンボの幼虫を食べる。
水草を切ったり食べたりして、生き物の隠れ場所も奪う。

このビオトープでザリガニ駆除が始まったのは2007年ごろ。
県の調査によると、駆除がされていない近くの水路では
1平方メートルあたり2〜3匹が生息しているが、ビオトープでは同1匹未満。
大きな個体も減り、メダカなどへの影響は小さくなったと考えられるという。

2時間ほどで釣りは終了。
バケツを持ち寄って数えると、オス119匹、メスが109匹。
体長数〜10センチ程度のザリガニがその場で調理された。

尾の先をちぎり、黒い「背わた」を引き抜く。
塩を入れたお湯で数分ゆでると、赤黒い殻が鮮やかな赤色に変わった。

あら熱がとれてから手で殻をむき、尾の部分の身を口に放り込む。
臭みはなく、味はエビやカニとそっくりだ。
胸の部分にある「ミソ」をなめてみると、濃厚な風味が鼻に抜けた。

素揚げもある。
熱したサラダ油で数分、殻がオレンジに近い赤に染まった。
こちらも臭みはなく、もっと香ばしい。

鳥取県南部町でも自然観察指導員の桐原真希さん(43)が希少種を守るため、
市民と一緒にアメリカザリガニを釣って食べる催しを8年ほど続けてきた。
ふつうのエビと同じようにチャーハンやパスタの具などとして使えるという。

「北欧などでは一般的食材。その価値を知った人にどんどん捕まえてもらい、数を減らしたい」

写真:素揚げのザリガニにかぶりつく男の子
https://www.asahicom.jp/articles/images/AS20170822002858_comm.jpg

以下ソース:朝日新聞 2017年9月6日14時59分
http://www.asahi.com/articles/ASK8L56Z7K8LULBJ009.html