政府は3日、韓国・釜山の慰安婦少女像設置への対抗措置として一時帰国させた長嶺安政駐韓大使らを、約3カ月ぶりに帰任させることを決めた。

 来月9日に行われる韓国大統領選の有力候補が慰安婦問題に関する日韓合意の見直しをこぞって主張する中、日本が手をこまねいていては、合意が空文化しかねないと危惧したためだ。また、北朝鮮の核・ミサイル問題が一層緊迫化し、日韓の連携を強化する必要性も考慮した。

 「日韓合意は国と国との約束、国際的な責務だ。政権が代わっても変わらない」。岸田文雄外相は大使帰任を記者団に発表した際、韓国次期政権も慰安婦合意を継承する必要があるとの考えを繰り返し強調した。

 だが、韓国大統領選では、慰安婦合意の再交渉を訴えている最大野党「共に民主党」前代表の文在寅氏が支持率でトップを独走。他の候補も合意の撤回や見直しに言及している。このため、日本政府関係者は「次期政権は日本にもっと厳しい態度で接してくる。発足後まで大使帰国を長引かせれば、帰任はますます難しくなる」と危機感をあらわにした。

 日本としては、次期政権が合意白紙化へ行動を起こす前に、現政権トップの黄教安大統領代行との間で、少女像撤去に向け進展を図りたい考えだ。しかし、日本のこれまでの要請に対し、朴槿恵前大統領の罷免で求心力を欠いた現政権から前向きな回答はないという。岸田氏は「韓国側からさまざまな対応について説明を受けたが、現状で結果に結びつくものではない」と不満を示した。

 一方、長嶺氏が帰国中の2、3月には、北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを発射。6度目の核実験に近く踏み切る可能性も指摘され、日韓連携の重要性は高まっている。北朝鮮の挑発がエスカレートすることをにらみ、大使帰任で「高いレベルの緊密な情報交換」(岸田氏)を促進することにした。 

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