相変わらず、不祥事だらけの腐った施設

938号 労働判例 「川島コーポレーション事件」
              (千葉地裁木更津支部 平成21年11月10日 判決)
介護ヘルパーの介助時の負傷につき使用者の安全配慮義務
(健康・安全教育義務)の違反が認められた事例
介護ヘルパーの介助時の負傷と使用者の安全教育義務
  
 〈事実の概要〉
 本件は、有料老人ホームで雇用され、介護ヘルパーとして入所の老人等の介助に当たっていたX(原告)が、本来2人以上の者によって対処しなければならない状況において単独で入所者の介助を行い、後遺障害の残る傷害を負ったケースで、使用者(有料老人ホームを経営するY社、被告)に対して、安全配慮義務違反を理由に損害賠償を求めたものである。
 Xは、介護ヘルパー2級の資格を取得した翌々月、平成17年3月19日、Y社の経営する有料老人ホームの1つに採用され働くようになった。採用後、Y社から「新入社員オリエンテーションマニュアル」を渡され、勤務時間や業務の概要等について説明を受けたが、介助作業の際に職員自身の身体の安全保持を目的とした、自身の身体の安全を守るための基本的注意事項等については指導・教育を受けなかった。
 Xは、勤務を始めて1ヵ月足らずの平成17年4月12日、その勤務終了時刻のころ、B棟に戻る途中で、「きゃー、助けて」という声を聞き、その声の方向に赴いたところ、B棟223号室においてベッドと車いすの脇の床に入居者であるOさん(当時81歳、下肢に高度の拘縮があり、認知症のような症状も見られた)が倒れているのを発見した。Xは、当日、B棟の担当ではなかったので、「ヘルパーさん、誰かいませんか」と3回ほどYの職員を呼んだが、その場に誰も来なかったので、そのままOを放置しておくことはできないと考えて、Oを単独で抱き上げて脇にあった車いすに乗せようとした。その際、自らの左手をOの首の下に添えて右手を左膝下方向から抱えて乗せようとしたが、Oの身体が硬直し、足からずり落ちそうになったため、もう一度右手で両膝を抱きかかえ、腕および腰部に力を入れて持ち上げようとしたところ、右手関節付近に激痛が走った(本件事故)。それでもXは、ようやくOを車いすに乗せることができた。
 Xの本件事故による傷については右手関節捻挫と診断され、後に業務上の災害であり、後遺障害等級きょう9級である旨の認定を受けた。
 本件は、Xが、上記の事故によって被った損害につき賠償を求めたものである。