これがいかに深刻な問題なのかは、いまの現場のリアルを知ればお分かりいただけるはずだ。
 先日、91歳の誕生日を迎えた“友人”が見た「今の老人ホーム」の有り様を紹介しよう。

朝3時に起こさないと「朝食に間に合わない」
 友人は90歳のときに「老人ホーム連続転落死に見る
『介護崩壊』の予兆」で、介護現場の職員の方たちの苦労を話してくれた女性と同一人物である。そちらも是非お読みいただきたいのだが、そこでも書いたとおり、
ご主人が要介護となりご夫婦でホームに入所。終の住処で3年の時が過ぎた。

 「夫のような車いすの入所者は毎朝、6時過ぎになると食堂に連れて行かれます。70人近い入所者の配膳、投薬などをわずか3〜4人のヘルパーが行うのですが、
ヘルパーの中の2人は夜勤を終えたまま引き続き働いているので、気の毒で見ていられません。

 人手が足りなすぎて物事が進まず、結局、車いすで部屋へ連れ戻されるのは9時過ぎ。つまり窮屈な車いすに3時間近くも座らせられているのです。

 週2回の入浴日はもっと大変です。朝食後、入浴時間まで食堂で車いすのままずっと待っていなくてはならない。
終わるとまた食堂に連れて来られて、そのまま昼食になるので、部屋に戻ってくる時には6時間も経っているのです。入所者は増えてもヘルパーの数は変わらないので、
そのしわ寄せが夫のような、車椅子で介護度4か5の人たちにもろにきています。
そういう入所者のほとんどは、自らの意志表現ができない状態なので、じっと我慢しています。

 午前3時少し過ぎに隣室の夫の部屋から物音がするので、すぐ様子を見に行ったところ、ヘルパーが夫の着替えをしているところでした。3時頃はぐっすり眠っている時間なのに、
理やり起こされて おむつ替えなどさせられている夫が哀れでならなかったです。ヘルパーに文句を言ったところ、『今から始めないと朝食に間に合わない』という返事が返ってきました」