104 名無し草 [sage] 2022/03/18(金) 09:40:42.27
燃えるようなワインレッドの髪をさらりと耳にかけ、「それで?」と目を眇める。扇のように豊かな睫の間で、グレーの瞳が瞬いた。それ以外はどれも小ぶりな造りで、どちらかといえば儚く、美しい顔立ちをしている。先日の憤怒の表情が嘘のようだ。しかし相変わらず、華奢な体格に似合わぬ迫力がある。

背の高い筋肉質な男が鼻を鳴らした。頭の上、艶のある長髪の中でひくんと耳が動く。獣の耳だ。
思わず見つめていると背筋が凍るような顔で睨まれ、慌てて視線を外す。大型の肉食獣を思わせる鋭い眼光だった。

制服の上からでもわかる引き締まった筋肉と、左目に付いた傷痕が端正な顔立ちに迫力を加えている。

銀髪の男が柔和な笑みを浮かべて優也に語りかけてきた。口元は優しげだが、眼鏡の奥で細くなった瞳は知的な光をたたえている。指の一本まで計算されているような、隙のない動きだった。

まず、頭に飾りの布を巻いた白い髪の少年が、はつらつとした声でこちらに呼びかけた。
あんまり遅いから腹でも壊したのかと思ったぜ、と快活に笑っている。
その元気で明るい様子に少しほっとする。

金の髪をまとめた人が挑戦的な目を向けてくる。見惚れるほど美しい容姿をしていた。
声を聞くに男性のようだったが、男女どちらでも優也は驚いただろう。人でないと言われた方が納得できる美貌だ。

彼らの間に浮かんでいたタブレットが点滅する。今のはどうやらそこから発信された声らしい。
随分な早口のため全てを聞き取ることはできなかったが、そもそも人に聞かせようという意思の感じられない、地の底を這うような声色だった。