坂上
そうですね。あの当時、たとえばカメラを横にふる「パン」だとか、カメラを上下させる「ティルト」とかそのような撮影用語をみんなは知らなかったですし、文字情報である「テロップ」をどれくらい表示させるのかというのも、当時のスタッフはなんとなく編集していたんです。みんなで表示されたテロップをじーっと見て、「長いよね。じゃあもうちょっと短くするか」とか「短いよね。じゃあ長くするか」みたいな感じで、感覚だけで調整していたんです。

岩田
そのやり方ではダメだということですね。

坂上
はい。そのようなやり方では時間がかかるんです。僕が言ったのは、「テロップのように1回読ませたいものは、まず偶数秒を放り込んでみてください」と。たとえば4秒とか6秒という時間をまず入れてみて、そっからちょっとつまむ、あるいはちょっと足すくらいでいいんです。

岩田
そういったことは映像の制作で鍛えられた人にとって、普通のことでもあるんですか?

坂上
いえ、誰も教えてくれません。

岩田
それは自分で見つけるものなんですか?

坂上
はい。オペレーターが編集するのを毎日のように見ていましたし、ディレクターが、「ちょっと長いかな?」とか言いながら、8コマとか落とすようなことを観察していました。

岩田
ああ、職人の世界ですから、背中を見て覚えるんですね。そのような技術を持っていると、社歴が浅くても、かなり早くからいろんな仕事を任せてもらえるチャンスが増えますよね。

坂上
なので、『エアーコンバット』の開発が終わらないうちに、「あ、坂上、できるんじゃない」とか言われて、『ファイナルラップR』(※9)という業務用のレースゲームのチームにいきまして、入社早々から、同時に2つの仕事にかかわったりしました。

岩田
ものをつくる現場に勢いがあるときは、そういうことがありますよね。

坂上
そうですね。相手が忙しいのも関係なく、「とにかくやってみな!」という空気が充満していましたし、「任せてもらえるんだったら、頑張ります!」という気持ちが、当時の自分にはすごくありましたね。いまだったら、絶対に断ると思うんですけど(笑)。