30年以上にわたり張り子づくりを続ける神戸市須磨区の張り子作家、吉岡武徳さん(75)が、来年の干支「戌(いぬ)」にちなんだ張り子展を神戸市中央区内で開催している。張り子展は約20年前から毎年開いているが、今年は8月に交通事故で負傷。さらに10月には妻の治子さん(77)も事故に巻き込まれ一時意識不明の重体となったが、「諦めるわけにいかない」と開催にこぎつけた。

 吉岡さんが張り子づくりを始めたのは昭和59年、看病していた義母のために張り子を作ったことがきっかけだった。「張り子の表情がとてもかわいく、見ている人を笑顔にしてくれる」と、すぐに張り子づくりにのめり込んだ。

 張り子づくりが盛んな姫路市や岡山県倉敷市などの作家を訪ね、多くの作家の技を見て学んだ。その結果、「張り子の顔が注目されるよう目に薄い緑のアイシャドーを入れる」という独自の作風を生み出した。

 約20年前から毎年末、神戸市内で展示会を続けてきたが、今年は事情が違った。8月に神戸市長田区でミニバイクを運転中、車を避けようとして転倒。軽傷だったものの活動を一時休止したのだ。10月には妻の治子さんが神戸市須磨区で親族の車に同乗中、別の車に衝突され意識不明の重体に。4回にわたる大手術の末に意識は戻ったが、「張り子展どころではない」と開催を諦めかけた。

 そんな気持ちを一変させたのが、「お母さんを元気づけるためにやるべきだ」という長男(49)と次男(44)からの一言だった。展示会を手伝ってくれる友人らの顔も浮かび、「諦めるわけにはいかない」と開催を決意。治子さんの入院先に毎日通いながら、それ以外の時間を張り子づくりに費した。

 吉岡さんは「展示会に向けて忙しい毎日を過ごしてきた。来場者のため、手伝ってくれる友人のために、完成させた作品を見てもらいたい」と笑顔で語る。

 同市中央区元町高架通のギャラリー「プラネットEartH」で10日まで開催。問い合わせは同ギャラリー(電)050・3716・3540。

産経ニュース 2017.12.5 07:02
http://www.sankei.com/region/news/171205/rgn1712050058-n1.html