犯罪心理学者に聞くサイコパスの特徴と基準|サイコパスの意外な一面
Psycopath
サイコパス、近年では耳慣れた言葉で、シリアルキラーや残酷な殺人犯を指して使われる言葉です。映画や小説の中の彼らは、凶悪犯罪者でありながら、公の場では優秀でカリスマ溢れる魅力的な人間として描かれることがあります。


そんなサイコパスについて、駿河台大学で犯罪心理学の教鞭を執る小俣謙二教授に伺いました。フィクションとは異なる、現実のサイコパスとは、どんなものなのでしょうか。

※注意

本取材の内容は小俣謙二教授の見解であり、必ずしも他研究者・医師等の見解と合致するものではありません。研究が尽くされている分野ではないため、2021年6月現在の最新情報であることを念頭に置いてください。


目次

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小俣教授のこれまでの経歴
小俣謙二教授は名古屋大学にて心理学を学び、その後同大学で博士の学位を取得しています。また、多くの学校や企業などで兼任講師や教授、ポスドクなどを務めました。



心理学だけではなく、生理学の研究を行うなど、幅広い分野の知見を持ちます。これまでの研究分野は、「住居環境による心理的影響」「高層集合住宅での犯罪」「性犯罪被害者の心理的な影響」「判例を用いたバラバラ殺人事件の分析」「交通違反者の心理」など多岐にわたります。



では、実際に小俣教授にサイコパスについて話を伺いたいと思います。

日本の犯罪史においてサイコパスの犯行だと思われる代表的な事件はありますか?
実際に私が鑑定をしているわけではありませんが、一般的に資料公開されているものでサイコパスの事件だとされているものとして、「大阪教育大学附属池田小学校事件」が挙げられます。

大阪教育大学附属池田小学校事件とは

大阪市池田市の大阪教育大学附属小学校にて、2001年6月、犯人の宅間守が無差別殺傷を起こした事件。2003年8月28日に大阪地裁が死刑判決を出し、2004年9月14日に執行された。

この事件については、精神科医である岡江晃氏の鑑定により精神病質者(サイコパスの日本語訳)の情性欠如型であるとされています。また、反社会性パーソナリティ障害とサイコパスを同じものとする立場からすれば、「神戸連続児童殺傷事件」も該当すると考えられます。

神戸連続児童殺傷事件とは

「少年A事件」、「酒鬼薔薇聖斗事件」とも呼ばれる。1997年、神戸市須磨区で当時14歳の少年が起こした連続殺傷事件。手口の残酷性や、犯人が少年であることから、社会的注目を浴びた。

ただし、「神戸連続児童殺傷事件」では、犯人の少年が当時15歳未満であったため、厳密には反社会性パーソナリティ障害ではなく素行障害とされました。

素行障害とは

アメリカ精神医学会が定める、精神疾患の診断名のひとつ。決められたルールを守らず、反抗的・攻撃的・暴力的な行動を起こす。窃盗や家出を複数回・長期的に続けることも症状のひとつ。通常は、18歳未満(ある条件下では18歳以下)で診断されるもので、成人後の反社会性パーソナリティ障害の前段階とされる場合もある。


上記の事件の犯人はどのような点がサイコパスであると思われるのでしょうか?
大阪教育大学附属池田小学校事件においては、岡江晃先生の鑑定書を見ると、宅間守の経歴から明らかに「情性欠如型」もしくは「反社会性パーソナリティ障害」であることが伺えます。たとえば、小さいころから窃盗を行ったり、レイプといった残忍な内容の空想癖があったりする点や、何人もの女性との交際の中で暴力行為・性的行為をすることがありました。


また幼少期には、友人の耳の中に火を点けた爆竹を入れたり、排泄物を食べさせようとしたり、常軌を逸した行為があったようです。

実際に精神科医などがサイコパスであると明確に診断・断定することはありますか?
実際に医師がそのように診断することはありますし、過去の裁判の中でもありました。実際に裁判の判決において、「精神病質の◯◯型」といった鑑定が採用されています。


また、DSM-5という診断のためのマニュアルに、反社会性パーソナリティ障害というものがあります。サイコパスと反社会性パーソナリティ障害を同一視する立場に立てば、DSM-5の診断基準に従って明確な診断が可能です。