2 VTUBERと名誉毀損

(2)プライバシー
 
 Vtuberとの関係で重要なのはプライバシーである。すなわち、Vtuberの「中の人」が公表されていない場合に、熱狂的なファンがこれを突き止めて公表してしまうことがよく見られる。
 
 上記東京地判令和3年6月8日はVtuberのファンスレッドにおいて、そのVtuberの中の人であるとして、顔写真を添付した投稿をしたことで、顔写真の人物(対象者)がVtuberを演じる者であると考えるのが通常であるとした。そして、プライバシー侵害の有無について、以下のとおり論じてこれを肯定した(注10)。「そもそも着ぐるみや仮面・覆面を用いて実際の顔を晒すことなく芸能活動をする者もいるところ、これと似通った活動を行うVチューバーにおいても、そのVチューバーとしてのキャラクターのイメージを守るために実際の顔や個人情報を晒さないという芸能戦略はあり得るところであるから、原告(注:対象者)にとって、本件画像が一般人に対し公開を欲しないであろう事柄であったことは十分に首肯できる。」


 上記東京地判令和2年12月22日も、VTuberとして「B」のアバターネーム又はハンドルネームで活動していた原告について、電子掲示板上で、本名や年齢を明らかにした事案について、「本名や年齢は個人を特定するための基本的な情報であるところ、インターネット上で本名や年齢をあえて公開せずにハンドルネーム等を用いて活動する者にとって、これらの情報は一般に公開を望まない私生活上の事柄であると解することができるから、本件投稿は原告(注:対象者)のプライバシーを侵害するものであったと認められる。また、本件全証拠をみても、本件投稿について違法性阻却事由があるとはうかがわれない。」としてプライバシー侵害を認めている。

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