ふと、楠栞桜は自身に何か邪悪なものが憑りついていると考えた。
そこである有名な除霊師に祈祷をお願いした。
──午前4時、祈祷が始まる。
楠栞桜は目を瞑り一心に祈り続けた。
すると、自身の中から何かがスゥーと抜けていく感覚を覚える。
「やった、助かった、私助かったよ!」
しかし祈祷師は言う、
「ここからが正念場じゃ!悪霊が元の肉体に戻らぬように縁を断ち切るんじゃ!」
楠栞桜はもう一度強く出ていけ、出ていけ、と念じ続ける。
ブツリ、何かが切れたような感覚を覚えた。
「よし、これでおぬしに憑りついた悪霊はキレイに断ち切れたぞ」
「ありがとうございます!ありがとうございます」
楠栞桜と祈祷師が抱き合いながら泣いている。
私は、ただ唖然と見つめていた。
悪霊は私だったのだ。