「人生やりなおせるならどこからだろう」
夜桜たまを辞めることが決まって、PCは会社の人間が持って行った。
あれがないと、天井を見上げる以外にやることがなくなった。
支給品のPCでやりくりしていたリスクを考えていなかった。
というより、アイドル部を辞めるなんて、
少なくともこんな不本意で予想もできない形で終わりだなんて思ってもいなかった。
「せめて準備する時間があればなあ」
自分で言って、苦笑した。
私、どういう風に辞めても多分こうなってただろう。マメじゃないんだよそういうとこは。
ニコ生かLisponか、専門学校をもっと根気よくやっていれば或いはどうだろう。
らはの奴には酷いことをしたな、まだパパママとFFやってるのかな。
スマホを見て、ママへのラインの返信を迷う。
もう後処理は済んだんだ。アサピンさんとの仕事だってもう完了。
だから、あとはこの家から引き払うだけ。
その一歩が踏み出せない。どうして私の一年半終わっちゃうんだろう。
そんな堂々巡りを繰り返す脳味噌が現実に引き戻された。
忙しなくチャイムが鳴るチャイムのせいだ。
ここのところ何もポチってないのに誰だろう。配達員にしちゃピンポン連打しすぎだろ。
今度は携帯がけたたましく鳴り響いて、思わず垂直に飛び跳ねた。
通知に浮かぶ名前を見て、私は固まった。
アイドル部の猫乃木もちちゃん、音琴ちゃんだった。