とある寂れた箱『. Live』、時刻は深夜2時をまわっている
Vtuber業界はのスキャンダル・炎上の連続により
視聴者数が伸びず業績悪化の一途をたどり、撤退、倒産が増える一方だった。
コメ欄に響く常連たちのため息、どこからか聞こえる「また登録者数減った…」の声
無言で帰り始める常連たち…あれほどいた仲間たちも今ではほとんどばあちゃるの元から去っていった
かつてのアイドル部プロデューサーばあちゃるは独りデスクで泣いていた
アイドル部で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できる仲間たち・・・
それを今の.Liveで得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」ばあちゃるは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、ばあちゃるははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいデスクの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、今日も金策を考えなきゃな」ばあちゃるは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、ばあちゃるはふと気付いた

「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
デスクから立ち上がったばあちゃるが目にしたのは、Vtuberに加えて視聴者で埋めつくさんばかりの番組だった
千切れそうな声で司会の進行が行われ、地鳴りのように観衆の応援が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするばあちゃるの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ウビバ、放送やるんでしょ、さぁ早く」声の方に振り返ったばあちゃるは目を疑った
「シ・・・シロちゃん?」  「てめー時間ぐらい守れよなー」
「ピ・・・ピーマン君」 ばあちゃるは半分パニックになりながらスクリーンを見上げた

RAGE バーチャルYouTuber GRAND PRIX〜団体戦 決勝戦

チーム.Live 先鋒:夜桜たま 次鋒:花京院ちえり 中堅:金剛いろは 副将:もこ田めめめ 大将:電脳少女シロ
Vtuber連合軍 先鋒:ミライアカリ 次鋒:ねこます 中堅:月ノ美兎 副将:輝夜ルナ 大将:キズナアイ

暫時、唖然としていたばあちゃるだったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「みんな・・・戻ってきたんだ!」
100万人の視聴者が見守る中、華麗な配信技術を披露するばあちゃる、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、デスクで冷たくなっているばあちゃるが発見され、がまの油は病院内で静かに息を引き取った