2019/03/13 金剛いろは もこ田めめめコラボの真実
 金剛いろはと夜桜たまが同棲していた部屋は、『怪獣めめゴンの悲劇』のあと、HMPD(重度もこ田汚染区域)に指定され、除染の対象となった。除染とは、単に取り壊しを意味していた。二人は、神楽すずの先導のもとで、北上の元に向かうことになった。
「帰る場所ってこんなに簡単に無くなっちゃうんだね、家族もそう……」
 金剛が、まるでこんなことは何回も起きてきたというようにつぶやいた。たまが背中をなでた。夜の厳しい寒さが彼らを包んでいた。
「すずちゃん、いつ着くの?」
「実は、正確な場所は私も知らないんですよねー……ふーちゃんから連絡が来て、ここらへんに戻ってこいとしか言われてないので……」
 夜桜の顔が曇った。何よりも、この状況で、自分が何もできないことが悔しかった。天鳳の段位は下がり続けていた。
 突然、暗闇がたわんだように見えた。白い刃がきらめいた。電脳空間が切られたように、夜桜には見えた。
「ふたばんわ〜」
「ふーちゃ、双葉さん!」
 北上は切り裂かれた穴から、顔だけだして、「ごんざぶろう、げんき?」と声をかけた。金剛がハッハッハッハッと答えた。
「でんしきき、ぜんぶおいていってね」
 と双葉が言って、金剛と夜桜に替えの服を渡した。普通の衣装のように見えたが、電子デバイスがすべてパージされていた。
「めめめちゃんがきちゃうから」

 北上が作った空間の穴は、(あまり見栄えの良くない)城に続いていた。四人は玉座にもたれかかって話をした。今までの話ばかりした。これからのことは考えたくなかった。
 その時、『おっすおっす こんばんめえ』と、聞き慣れた声が響いた。
 金剛が弾けたように「ゆっくりしていってねえ」叫んだ。PMSD(めめめ暴露後ストレス障害)の典型的な反応だった。
「ごんざぶろう!」
 北上が金剛を抱きしめた。神楽が「ん゛ん゛!」と唸った。
「電子機器の音がするんだよなあ! なあ!」
 その右手が夜桜に向かって伸びた。たまが反応する前に、神楽すずの拳は電脳iPhoneを叩き割っていた。天鳳の段位はすでに1段にまで落ちていた。
 金剛は何分かしたら落ち着いた。神楽の右腕は、黒く、脂ぎった剛毛で覆われていた。彼女はそれを見て、乾いた笑いを漏らした。
「ゴリラの時間は終わりよ」

「双葉ァ……これからどうしたら」
 夜桜が聞くと、ふたばはどこからかおすし🍣を取り出して言った。
「おしゅしもそこがつきそう じりひんだね シロちゃんともうまやろうとも れんらくがとれないし」
 夜桜は自分の無力さを噛み締めた。詰んだか? と自分を責めた。
 めめめと戦う日は容赦なく迫りつつ合ったが、状況は単に悪くなるばかりだった。寝る前に、神楽が奏でるウクレレの音が、4人の心を癒そうと、無謀な試みを続けている。