川本文庫 「覗き見る男(後編)」前編は>>731

私は竹本の行方を知るため、彼が最後に話していた鋼兵について調べることにした。

検索するとすぐに、「鋼兵まとめ動画 その43」と出てきた。
私はつくづく辟易したが竹本の為にも1から全て見ることにした。
その1,2,3……

なんだこれは。

全ての動画を見た直後、みるみるうちに私の心の中が激情で塗りつぶされて行く。

この感情は「怒り」だった。

鋼兵に対する義憤が私を突き動かした。

鋼兵アンチスレPart791を開き、私はそこに書き込まれていた鋼兵へのサジェスト浄化の書き込みと真逆の事を書き込み続けた。

食事なんてしている余裕はない。早くこいつを消さなければ。

私は食卓にあったオリーブオイルを飲み、アンチスレのサジェストを汚染し続けた。

しばらくすると喉が乾き私は「あ」と書き込んでから次の書き込みまでにグレープフルーツを食べた。

その夜に私は胃が痛くなり、書き込みをしながら机にあった硫酸マグネシウムを飲んだ。


「そうか。そういうことか。」

私は急に可笑しくなってきた。

笑いが止まらない。

「あはは、あはははは、アッハハハ、アッアッアッ」

そこには人の姿はなく、人形と緑色の排泄物だけが残されていた。

それから3日後のこと。

「―と竹本はまた休講か。まぁいいや、講義を始める。
今日は有名な哲学者、フリードリヒ・ニーチェの発言のなかでも特に有名な言葉について考える。
『 怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ 』……」

おわり