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―――集める喜びを感じられるプラットフォームを作って、各方面で使ってもらうという展望も?

おっしゃる通りです。引き続きトークン発行と販売以外のマネタイズ手段も考えてはいくのですが、逆にトークンを発行し続けてもユーザーのストレスにならない構造を作ればいいという考え方もあるわけですよね。

上手くいっている例が、ブシロードの『ヴァイスシュヴァルツ』だと思います。いろいろなIPが相乗りになり、あるアニメのカードが発売されると興味のある人が購入するという、ユーザーがストレスを感じにくい設計になっています。いろいろなIPに使ってもらえるという点で、プラットフォーム化もあり得ると思いますね。

―――電通が手がける本人確認は、金融とは別の方法で行うのでしょうか。

そうですね、簡易的な本人確認が求められる場合も出てくると思いますし、何より一番中立的なポジションで製作委員会に参画しているのが電通だと思います。たくさんのIPと信頼関係を築き、すぐにアクセスできるのも電通しかないと思いますし、メディアプラットフォームのようになっていければいいなと思います。

ビックIPとの取り組みを推進し、一般化への道を示す
―――Jリーグゲームのお話を詳しくお聞かせください。

絶賛企画開発中ですが、集める楽しさだけでなく遊んで楽しいゲームを作りたいと考えています。実際のクラブチームの運営をメルカリの小泉氏など身近な人が手がけるようになりましたが、“選手を育てて売る”というビジネスでもあるんですよね。地域にいる有望選手をユースから育て、ヨーロッパチームに移籍させると大きな利益が得られますが、ゲームにもそういった要素を取り入れると面白いのではと考えています。

一度発行されたカードは永久的にブロックチェーンに残りますから、引退後も二次流通手数料が選手に入るような仕組みができるようになるといいと思います。選手のセカンドキャリアにも繋がりますし、選手側から新しいコンテンツが出てきたり、引退した選手とのコラボもできるかもしれません。トークンの価値を上げていくために、本質的に自分の価値を向上させていく活動をする流れができるとなお良いですよね。

Jリーグは新しい技術やコンテンツフォーマットに対してアグレッシブですし、いかにグローバルに人気のあるリーグにしていくかということをずっと考えてらっしゃるのではないかと思います。グローバルに展開できるコンテンツフォーマットとプラットフォームに注目されていたとすれば、もともと目線が合っていたという部分があったと思います。

――クリエイターエコノミーのような取り組みも出てくるのでしょうか?

コンプ報酬のように何かを一定数集めると得られるものは、設定資料や書き下ろしのような、よりクリエイター色があった方が喜ばれると思います。IPホルダーだけでなくクリエイター自身にも分配できる仕組みは作れると思います。プラットフォームがクリエイターのキャッシュポイントを増やすことができると思うし、エンドロールに少し出るようなコピーライトを、より前面に押し出してブランド化するようなお手伝いもできると思います。

―――NFTをより一般化、大衆化させていくための取り組みを改めて伺えますか。

まずUIでMetamaskを使うようなものが最善だとは思えませんから、現状ではLINE Blockchainと取り組んでいきたいと思っています。あとはNFT自体がアートの文脈が強いため、「オークションで数十億円の取引」という話題が目立ちますが、大衆化を考えるとメルカリ黎明期に石やドングリが売れたという、どんなものでもニーズを可視化すれば売れる可能性があるというUXこそが大切ではないかと思います。数千万儲かった人が数人いるのではなく、数百円儲かった人が何百万、何千万と広がっていくことが、ブロックチェーンの価値を多くの人に気づいてもらうためには重要だと思います。

スタートアップもブロックチェーンの大衆化はあまり重要視していない印象を受けますし、原理主義的な感覚に陥っているようにも感じます。かつてEZwebやiモードなどの普及に携わってきた身として、道筋を示していきたいと思っています。
https://media-innovation.jp/2021/09/28/axelmark-nft-interview/