1946(昭和21)年6月28、29日の第九十回帝国議会において、新憲法草案の審議が行われた。
非常に有名な話で、ネット検索すれば、もろもろヒットするので、まとめておきます。

質問に立った共産党の野坂参三は
戦争には侵略戦争と防衛的な戦争があり、
「コノ憲法草案ニ戦争一般放棄ト云フ形デナシニ、我々ハ之ヲ侵略戦争ノ放棄、斯ウスルノガモツト的確デハナイカ」
と主張していたのである。

対する吉田茂の答弁は、
「(野坂氏は)国家正当防衛権による戦争は正当なりとせらるるようであるが、私はかくの如きことを認めることが有害であると思うのであります。近年の戦争の多くは国家防衛権の名において行われたることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認めることが戦争を誘発する所以であると思うのであります。野坂氏のご意見の如きは有益無害の議論と私は考えます。」

さらに野坂は、
「要するに当憲法第二章(第九条)は、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある。それ故に我が党は、民族独立の為にこの憲法に反対しなければならない。」
という反対演説を行い、第九条の規定に反対したのである。

新憲法草案に対する記名投票による採決では、
投票総数 429票
賛成(白票) 421票
反対(青票) 8票

現行の日本国憲法について、制定議会の審議時点では、反対者8人中の6人は共産党員であった。
議会に議席を持っていた共産党の全議員が、現行の日本国憲法の草案に対し、反対を表明していた。

しかし、最も重要なのは、吉田茂の答弁に注目したい。
『私はかくの如きこと(=国家正当防衛権による戦争)を認めることが有害であると思う』
『正当防衛権を認めることが戦争を誘発する所以であると思う』
『野坂氏のご意見の如きは有益無害の議論』

これらの言、歴史を、今改めて考えたい。