古谷:ネット動画というのは書籍よりも情報量が少ないわけです。ネット動画を3時間観て本1冊分の教養に相当するかというと、
それは無理ですよね。だから、結局そこで読み取れることが何かというと「偉い先生がこう言ってるんだから正しいんだ」という
プチ洗脳みたいなことが、ネトウヨとなってダーっと広がっていったのが2007年、8年ぐらいにあったんです。

そしてこの頃から愛国ビジネスが生まれます。『愛国奴』でも描きましたが、もともと『産経』『正論』などに寄稿して細々と
食っていた右派系人士が、ネット時代になって低リテラシーを相手に塾をやり始め、その宣伝をCSやネット配信の番組が
担っているという構図が出来上がったのです。とにかく自分のレギュラー番組を獲得して、「国体を学ぶ塾をやっている」とか
宣伝をするんです。つまりネット動画で宣伝してリアルサービスの会員という名の「信者」を勧誘する、という手法の完成です。
日本の誇りを支えるとなれば、万札が出てくる

―― ビジネス化はここから始まる、と。
古谷:会費は概ね月額数千円〜1万円とかで、それを番組で宣伝すると信者が続々参加する。
信者が一定数居ると、その信者数や動画再生回数をエビデンスに、零細出版社が本を出してくれる。
予想より売れると、もうちょっと中堅の出版社が出してくれる……と。みんな大体こんな手法を踏んでいます。

―― 最近は「コミュニティビジネス、サロンビジネスがアツい」とよく語られますが、それを随分前から保守業界ではやっていたということですね。
古谷:それらを先んじて全部取り入れているのは右翼・保守だと思いますね。人種差別的な主張を打ち出していたら国や自治体の
補助金なんかもらえませんから。右翼ってNPOとかを作って、行政から支援を受ける、といった手法を取ることができないんですよ。
だから仲間内からの寄付とか会費に頼るしかないんです。そういう構造になっているので、右翼は勉強会をつくりたがる、
囲い込み商法をしたがる。このような動きはすごく早かったですね。