■被害拡大、背景に群発地震 耐震化も損傷蓄積 「事前の対策を」識者警鐘・能登地震


最大震度7を観測した能登半島地震では、石川県珠洲市などで多数の家屋が倒壊した。

 同県輪島市では約200棟が焼ける大規模火災も発生。被害拡大の背景には、群発地震による損傷の蓄積などがあると専門家は指摘する。

 震災発生後に珠洲市と輪島市を現地調査した金沢大の村田晶助教(地震防災工学)によると、今回の震源域では3年以上にわたって地震が発生していた。昨年5月にも珠洲市で震度6強を観測したばかりで、「1回の地震だけでも十分被害は出たが、損傷の蓄積でより大規模になった」と分析する。

 能登半島北部には屋根に黒い「能登瓦」がふかれた伝統的な木造家屋が多い。風や雪には強いが、瓦が重く、揺れには弱いのが特徴だ。

 珠洲市で被災した木造家屋約100棟を調べたところ、半数以上が居住できない「全壊」だった。1981年以降の新耐震基準で新築や改築された建物も多かったが、群発地震で住宅の柱と梁(はり)をつなぐ金具が緩んだり、壁内に亀裂が入ったりして建物の強度が低下した可能性が高いという。

 輪島市の観光名所「朝市通り」一帯では大規模な火災が起きた。東京理科大の関沢愛教授(都市防火)は「昔ながらの木造の建物が残る密集地で、延焼しやすい街並み。断水の影響で初期消火もできなかった」と拡大の理由を説明する。

 珠洲、輪島、能登、穴水の4市町の消防活動は広域消防組合が担うが、今回は4市町全てが被災した。「道路が寸断され、おのおの救助活動があるため相互応援ができなかった。延焼力に対して消防力が弱かった」とも指摘した。

 道路の寸断は、捜索活動や物資輸送の遅れも引き起こした。村田助教は「伊豆半島や紀伊半島は南海トラフ地震で大きく被災する可能性があり、今回と似た状態になると予想できる」と指摘。海運輸送の検討などを挙げ、「次に起こり得る場所では事前の対策を打つべきだ」と警鐘を鳴らした。

1/15(月) 6:53配信 時事
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