理化学研究所の渡辺力也主任研究員や東京大学の西増弘志教授らは、新型コロナウイルスを最短3分で検出できる卓上サイズの装置を開発した。同グループが5月に開発した最短9分で検出できる装置を高速化・小型化し、コストも下げた。クリニックなどで手軽に検査できる装置として、2023年度中の実用化をめざす。

患者の唾液や鼻から採取した検体を装置に入れると、全自動で最短3分でウイルスの量が分かり、感染の有無を高精度に判定できる。PCR検査では必要なウイルスの遺伝子を増やす工程がなく、かかる時間を短縮できる。

5月に開発した装置は、検査速度は速いものの大型でコストも高いため「大病院では使ってもらえても、街中のクリニックには導入しにくい」(理研の渡辺主任研究員)という課題があった。そこで全体の設計を見直し、特に検出部を大幅に改良した。

従来は検出部に共焦点顕微鏡と呼ばれる3000万円程度と高価な顕微鏡を使っていた。今回は産業用途で使われる「テレセントリックレンズ」と呼ぶレンズと市販の一眼レフカメラで構成した。これにより部品コストを約30分の1に低減でき、検査の流れも迅速化できた。

渡辺主任研究員は「新型コロナだけでなく、インフルエンザウイルスなど様々な感染症関連のウイルスを一度に検査できる装置に仕上げたい」と話す。臨床検査装置大手のシスメックスと23年度中の実用化をめざす。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC277D30X21C22A0000000/