米ハワイ大学マノア校などの研究チームは、南太平洋のトンガで1月に発生した海底火山の大規模噴火後、48時間以内という短期間に火山周辺の海域で植物プランクトンが約10倍に急増していたとの分析をまとめた。広範囲に降り注いだ火山灰が栄養分となり、「ブルーム」と呼ばれる植物プランクトンの大増殖が起こったと考えられる。
トンガの首都ヌクアロファのあるトンガタプ島の北およそ65キロメートルに位置する海底火山「フンガトンガ・フンガハーパイ」は1月15日、爆発的に噴火した。噴煙は高度数十キロメートルの成層圏まで到達し、大量の火山灰を放出した。

研究チームは噴煙が消えた後、人工衛星で海面を観測し、植物プランクトンが光合成のために持つ色素「クロロフィルa」の濃度などを調べた。噴火のピークから2日たたない同月16日、火山周辺の海域でクロロフィルaの濃度は約10倍に増加していた。周辺海域に広く降った火山灰の影響で、植物プランクトンが急激に増殖したとみられる。

植物プランクトンが増えた海域の面積は16日時点で約6万平方キロメートルと、ハワイ・オアフ島の面積の約40倍に達した。クロロフィルaの濃度は17日以降に徐々に下がり、27日には平年の範囲内に戻った。面積も28日に5分の1の約1万2000平方キロメートルまで縮小した。

周辺海域の海面近くは通常、栄養分が少なく、植物プランクトンが増えにくい環境にある。同大海洋微生物研究教育センターのデビッド・カール共同所長は「噴火後これほど短期間に広範囲で増加が見られたことに驚いた。海の生態系が栄養分の供給にいかに早く反応できるかを示している」と話す。

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