和歌山県串本町で人工衛星用ロケットの打ち上げを目指している宇宙事業会社「スペースワン」(東京都)は19日、2022年末としていた初号機発射を23年2月末に延期することを明らかにした。延期は2回目。同社は新型コロナウイルス感染症流行や、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で世界的に物流網が乱れ、海外からの部品調達が遅れていることなどが原因としている。

 地元自治体や関係機関でつくる協議会の臨時総会が町内で開かれ、同社の阿部耕三取締役が明らかにした。初号機の発射は当初21年度中としていたが、22年末に延期となり、今回さらに約3カ月延期することになる。

 阿部取締役は「物流網の滞りで試験などが想定通りのスケジュールで進まなかった」と釈明。2月の侵攻以降、「直接的な原因かは分からないが、物流の停滞が悪化している」と語った。一方、侵攻の影響を巡っては「ロシアのロケットを使わず、他の国で人工衛星を打ち上げようという動きが実際に起きている」として、需要増につながる可能性のある顧客動向の変化も見られると説明した。

 発射場は21年度末までに完成。現在、開発中のロケット「カイロス」の試験は最終段階にあり、現地では本番に近い形で、発射直前までの手順を確認するリハーサルもしているという。12日の打ち上げに失敗した宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット6号機については、カイロスも一部同じ部品を使っているという。しかし、阿部取締役は「正確な失敗原因は明らかになっていないが、今回の延期とは直接関係はない」と説明した。

 串本町の田嶋勝正町長は「多くの町民が楽しみにしていただけに非常に残念だが、機運の盛り上げや受け入れ態勢を整える時間と前向きに捉えたい」と述べた。下宏副知事は「地域の関心も高い。順調に進むことは地域活性化にもつながるので、大成功できるよう準備を万端にしてほしい」と語った。【山口智、松田学】

https://mainichi.jp/articles/20221020/k00/00m/040/134000c