東京工業大学と関西学院大学の研究チームは、貴金属や希少金属を使わずに目に見える光「可視光」を当てて二酸化炭素(CO2)を資源として有用なギ酸に変えられる光触媒を開発した。太陽光などで温暖化ガスのCO2を再利用する人工光合成に役立つ成果で、研究チームは「脱炭素化に向けた基盤技術として活用が期待される」としている。

人工光合成は脱炭素社会で有望な技術で国内外の企業や研究機関が開発を競っている。太陽光に含まれる様々な波長の光のうち、目に見える可視光のエネルギーが大きいため、可視光を生かせる触媒の開発が重要になる。ただ、これまでの素材は高価な貴金属や希少金属を使うタイプが多く、コスト面での課題が大きかった。

研究チームは鉛と硫黄を含む新しい素材で、光を当てるとCO2からギ酸を作れるようにした。ギ酸は燃やしても水しか排出しない次世代エネルギーの水素の運搬や貯蔵に使える。

新素材の性能を調べたところ、可視光のうち400ナノ(ナノは10億分の1)メートルの波長の光について、反応の効率を示す指標「量子収率」は2.6%だった。研究チームによると、貴金属や希少金属を使う場合はこれまで5%程度のものもあったが、貴金属などを使わない場合は1〜2%程度だったという。反応でできた生成物のうち、ギ酸の割合は99%以上と高い選択率を実現した。

現状は毒性のある鉛を含むため、今後、鉛と性質が似ていてより安全なスズなどほかの金属で高い性能を出せるように研究開発を進める。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC124P20S2A910C2000000/