5/28(土) 16:00配信
 
ナショナル ジオグラフィック日本版

クジラの子を3年育て続けたイルカ、フクロウの巣から顔を出したカモも、なぜ?

 野生動物が血のつながらない子どもを育てることは滅多にない。あってもたいていは同じ種の、血縁的に近い関係で起こるものだが、動物が異種の子どもを育てた珍しくもふしぎな例がある。

【動画】ネコの子守はなんとネズミ、 米の猫カフェ

 まずはアフリカのライオンとヒョウから。彼らは決して友達と呼べるような関係ではない。それどころか、ライオンはヒョウを殺す習性さえある。

 だからこそ、タンザニアのンゴロンゴロ保護区で2017年に目撃された光景は関係者を驚かせた。5歳のメスライオンが、生後数週のヒョウの子どもに授乳していたのだ。

「前例のないことです」と話すのは、野生ネコ科動物を保護する非営利団体パンセラの代表を当時務めていたルーク・ハンター氏だ。「野生でこんな行動は見たことがありません」

 こうした出来事は例外的ではあるが、ライオンがヒョウを育てることは生理的には可能だとハンター氏は言う。どちらの種も母乳にそれほど違いがなく、育児の期間も大きく変わらない。しかし、考えるべき要素はほかにもある。

 メスライオンはいずれヒョウを巣穴に連れ帰ることになるだろうとハンター氏は推測していた。入手できたわずかな写真では、開けた場所でメスライオンがヒョウに母乳をやっていたが、いつかライオンは巣穴に戻る。そこには数頭の子どもたちが空腹で待っている。

 うまくいけば、ライオンの子どもたちが大騒ぎせず、メスライオンはヒョウの世話を続けるかもしれない。それでも、巣穴で安全に過ごすのは容易ではない。ハンター氏によれば、ライオンの子どもたちでさえ、1年以内に死ぬ確率は平均で約50%と高い。

「したがって、まだ弱く幼いこのヒョウがメスライオンの子どもたちに加われたとしても、厳しい将来が待っています」

 残念ながらこのヒョウの子どもはその後目撃されておらず、どうなったかは謎のままだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/286f5662afa9dc585d51cc8ed6cb0aef3176b3f4