意思なき同意 その闇に迫る

「あなたわかる?この気持ち」
 言葉が胸に刺さりました。
 彼が療養所に入ったのは11歳のとき。
 誓約書には「死後の解剖に承諾します」と書かれていました。
 そこは隔離された施設。
 詳しい意味は理解できない。
 誰もが当たり前に署名するしかありませんでした。
 つい50年ほど前の出来事です。(岡山放送局記者 周英煥)

■死んでなお… 問題は解決されていない
 私は3年前、岡山県に記者として赴任しました。
 2つの国立ハンセン病療養所があり、かつて国の誤った隔離政策で入所した元患者がいまもふるさとを離れて暮らしています。

 「らい菌」によって皮膚や神経が侵されるハンセン病。
 現代では感染することも発病することもほぼありませんが、治療法がなかった時代には後遺症が残ることがあり、さらに「感染しやすい」といった誤った認識から偏見や差別が生まれました。

 何度か療養所を取材に訪れていましたが、心のどこかですでに解決された問題だと考えていました。

 ことし9月ある記事が目に留まりました。

 熊本県にある国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園」が行った解剖に関する調査について。

 記事には昭和40年までに少なくとも389人の解剖が行われていたと書かれていました。
 しかも入所する時に一律で解剖に同意する書類を提出させていた時期もあったといいます。
 療養所は報告書に「人権軽視というそしりは免れない」と書いていました。

 死んでなお人としての尊厳を踏みにじるような行為が行われていたかもしれない。
 解決されてなんかいない。そう感じたのが、今回の取材のきっかけでした。

不明な点多い遺体解剖
 調べてみるとハンセン病をめぐる遺体解剖の問題は、15年前の国の検証会議ですでに指摘されていました。
 報告書にはこう書かれています。

 「解剖は完全にルーチン化していた。亡くなった患者を研究対象物として扱い、直前まで生を営んでいた人間としての尊厳は完全に無視されている」

(以下略、続きはソースでご確認下さい)

NHK NEWS WEB 2020年12月15日 15時01分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201215/k10012763911000.html