イスラエル北部にある支石墓(ドルメン)の壁に、約4000年前のロックアートが発見されました。

支石墓は、世界各地で見られる古代の巨石墓であり、基礎となる支石の上に天井石を乗せて作られます。

中東では、イスラエル、ヨルダン、シリアなどで数百の支石墓が見つかっていますが、ヨーロッパや他地域のものとは違い、ロックアートのような装飾がないことで有名でした。

しかも、中東地域の支石墓を作った人々については、ほとんど何も分かっておらず、「失われた文明人」と呼ばれています。

今回の発見は、ロックアートを含む支石墓として貴重なものであり、失われた文明への窓口となるかもしれません。
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■人の顔をかたどったロックアートも

本研究は、イスラエル考古学庁(IAA)のウリ・バーガー氏とテルハイ大学のゴーネン・シャロン氏により報告されています。

両氏は、イスラエル北部のガリラヤとゴラン地域にある一連の支石墓を調査しました。

その結果、角の生えた6頭の動物と田んぼの「田」のような長方形で囲まれた3つの十字架が刻まれた支石墓が見つかっています。
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ロックアートは、肉眼で確認するには線が薄れすぎていたので、反射変換イメージング(reflectance transformation imaging)という技術を使って、全体像を視覚化しました。

動物は玄武岩の支石に彫られており、カモシカやヤギ、ウシなどを描いたものと思われます。
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年代測定の結果、支石墓とロックアートは約4500〜4000年前のものと推測されています。

また別の場所では、支石墓の壁に彫ったロックアートではなく、巨石自体を人の顔型に彫ったものも発見されました。

人の顔と断定されたわけではありませんが、目や口、鼻を表す中央の膨らみからして、何らかの顔を思わせます。
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支石墓には、重さ50トンに及ぶ石も使われており、それを組み合わせるとなれば、かなりの人手が必要です。

ロックアートを彫った目的が儀式なのか、豊作の祈りなのかは分かりませんが、これらを作った人々が、社会的に組織化された集団だったのは間違いないでしょう。

研究の詳細は、6月29日付けで「Asian Archaeology」に掲載されています。

Rock art in south Levantine dolmens
https://link.springer.com/article/10.1007/s41826-020-00033-3

https://nazology.net/archives/64701