宇宙物理学界を揺るがす大ニュース。

ブラックホールがなにか得体の知れない天体と衝突した!との新しい研究が発表されました。

6月23日付で『The Astrophysical Journal Letters』に掲載された論文によれば、地球からおよそ800万光年離れているブラックホールがなにがしかの天体とぶつかり、その衝撃が重力波となってアメリカのLIGOとイタリアのVirgo干渉計に届いたそうです。

以下、ブラックホール(中央の大きな黒い円)が謎の天体(ブラックホールのまわりを螺旋状に落ちていく小さな影)を飲みこむ様子と、その衝撃が重力波となって伝わってくる様子を再現した映像をご覧ください。

Visualization of the binary black hole merger GW190814 https://youtu.be/p4xHz-If6kw

検出された重力波は「GW190814」と名付けられました。問題は、衝突した時のブラックホールは太陽の23倍の質量を持っていたのに対し、もう一方はたったの2.6倍しかなかったことです。これは、なにか変だぞ!?と学者たちは騒然としています。

■存在し得ないモノ

なぜ変なのか。

論文を執筆したチームの一員であるノースウェスタン大学の宇宙物理学者・Vicky Kalogeraさんによれば、小さいほうの天体はブラックホールか中性子星のどちらかと考えられるそう。ところが、わずか2.6太陽質量のブラックホールとなると観測史上最小ですし(これまで観測された最小のブラックホールは5太陽質量)、同じ質量を持つ中性子星となればこれまた観測史上最大。どっちみち、これはおかしいぞ。ひょっとしたらまったく新しい種類の天体なのでは、という可能性も否定できないそうなんですね。

ちなみに、中性子星とは質量の大きい恒星の慣れ果て。超新星爆発後に残される、中性子でできた硬い芯です。密度がとても高いのが特徴で、これまでに半径10数メートルしかないのに2.3〜2.4太陽質量を持つ中性子星などが観測されてきました。

■質量ギャップ

今回衝突した小さいほうの天体について、「相当ショッキングな発見です。この質量はまったく想定外でしたから」と米Gizmodoにメールで説明してくれたのは、フロリダ大学の宇宙物理学者・Imre Bartosさん。Bartosさんによると、小さいほうの天体はどうやら「これまで存在しないはず」と考えられてきた質量を持っていそうなのだとか。これには「質量ギャップ」という問題が関わってきます。

バージニア大学とアメリカ国立電波天文台に所属している宇宙物理学者のThankful Cromartieさんによれば、「質量ギャップとは、今まで観測された中で一番重い中性子星と、一番軽いブラックホールの間に横たわる無のゾーン」を指しているそう。つまり、2.4から5太陽質量を持つ天体は存在し得ない、とこれまで考えられてきたのだそうです。

「今回の研究で最も興味深かったのは”質量ギャップ”に分類される天体が発見されたことです。ところが残念ながら、今回の観測のみではこの小さいほうの天体が中性子星なのか、ブラックホールなのかは断定できません」とCromartieさんは説明しています。ふたつの天体は質量の差があまりに大きかったため、中性子星が合体する際に見られるはずの潮汐変形(tidal deformation)が観測されなかったからなのだとか。

https://assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2020/06/25/200625_blackholecollision_top-w1280.jpg

続きはソースで

https://www.gizmodo.jp/2020/07/a-black-hole-collided-with-something-that-shouldnt-exis.html