《新型コロナウイルスは米軍やフランス軍の空母で感染者が続出するなど、軍事分野においても猛威を振るっている。

一方、自衛隊は「ダイヤモンド・プリンセス号」での対応で派遣隊員から一人も感染者を出すことなく任務を完遂した。

その「勝因」は何なのか。未曾有の危機をいかに乗り越えるのか。自衛隊制服組トップである山崎幸二統合幕僚長に、自衛隊の底力について聞いた

■地下鉄サリン事件、東日本大震災の経験を活かして

(中略)

――「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応では、派遣隊員から一人も感染者を出すことなく任務を完遂しました。「勝因」は何でしょうか。

(山崎)第一に、防衛省・自衛隊が組織力を発揮できた点が挙げられるのではないでしょうか。船内で起きている状況を迅速かつ的確に把握したうえで、計画を作成、実行できました。

第二に、隊員一人ひとりが責任感と使命感をもち、防護のための基本動作を愚直に実践してくれたこと。

第三に、指揮官が現場で明確な指示・命令を出し、強いリーダーシップを発揮してくれたことです。

今般の感染症対応の災害派遣は、自衛隊創設以来、まさしく未曾有の経験でした。他方、1995年に地下鉄サリン事件、2011年には福島第一原子力発電所事故において、それぞれ化学物質と放射線汚染下での災害派遣を行なっています。

これらは「見えない敵」との戦いである点で、新型コロナへの対応と共通しています。さらにいえば、部隊は平素からNBC(放射能、生物、化学)防護の訓練をしていたため、その恐ろしさや感染防護における基礎動作の重要性を認識していました。

――いかなる脅威であれ、それに立ち向かう備えと覚悟は万全だということでしょうか。

(山崎)災害派遣の開始にあたり、河野太郎防衛大臣から感染防護対策の徹底を指示されました。

それを受けて、われわれは「ダイヤモンド・プリンセス号」における災害派遣の業務ごとの感染リスクを判定し、防衛省独自の防護基準を設定するとともに、隊員がとるべき基本動作を明らかにしました。また、活動するうえでの動線、待機場所の「ゾーニング」も設定しています。

自己完結型の組織である自衛隊には、ウイルスの感染防護に知見を有する衛生部隊がいます。彼らが現地において、一般の部隊に対して教育を行なったことで、感染防護に必要な知識を派遣前から普及しました。

(中略)

――自衛隊中央病院では、新型コロナの陽性患者を多く受け入れながらも、5月下旬現在、院内感染は起きていません。なぜでしょうか。

(山崎)自衛隊中央病院では、標準的な予防策を徹底しています。患者の対応にあたる医官や看護官は、必要に応じてN95マスクやガウンを着用し、手指消毒の感染防護策を実施するほか、日々の業務終了時に体温を測定し、健康管理に万全を期しました。

同病院は新型コロナ以前から感染症指定医療機関に指定されており、定期的に対処訓練を実施していました。今回は初めての実際の任務でしたが、訓練と同じ構えで対処できたことが奏功しました。

とくに院内感染を防止するため、罹患した可能性のある患者の誘導要領や、感染のリスクに応じた個人防護具の選択及び感染症病床の確保は、対処訓練の成果を活用できた事例といえるでしょう。これまでの教育訓練が間違っていなかった証左だと考えています。

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