新型コロナウイルス感染症の治療薬として有望視されているエボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」。米国では症状の重い入院患者に投与する緊急使用が許可され、日本でも同様の動きが加速している。この期待の薬剤の効果は、いかに臨床試験において実証されていったのか。

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■臨床試験で見えたレムデシビルの効果

そしてこのほど米国立衛生研究所(NIH)は、注目されているこの研究の結果を初めて一部公表した。4月29日の発表によると、臨床試験を実施しているNIHの米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)は、これまでのデータからレムデシビルが一部の新型コロナウイルス感染症患者の回復を加速していることを見出した。具体的には、「回復までの期間の中央値はプラセボを投与された患者は15日、レムデシビルを投与された患者では11日だった」という。

大きな差ではないが、新型コロナウイルス感染患者の回復を改善することが示された初の治療法として、象徴的な発見かもしれない。4月30日の時点で世界で320万人の感染者が確認されている。そのうち米国人の感染者は100万人以上、報告されている死者数は60,000人を超えている。

ただし、患者の病状の程度、潜在的な副作用など、NIAIDがまだ発表していない患者に関する詳細データなしで、この結果を評価することは難しい。4月29日午後(米国時間)にホワイトハウスで実施された記者会見で調査結果を明らかにしたNIAID所長のアンソニー・ファウチによると、患者の詳細情報は数日以内に発表される見込みという。

「わたしたちがいま発表することにした理由は、この薬に効果があるという明確な証拠がある場合は、常にプラセボを投与されたグループにすぐに知らせて薬を使えるようにする倫理的な義務があるからです」と、ファウチは説明する。「31パーセントの改善は素晴らしい効果のように見えないかもしれません。しかし、薬がこのウイルスをブロックできることが証明されたことから、これは非常に重要な概念実証(PoC)なのです」

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■米国立衛生研究所(NIH)が実施した研究の意味

NIHが実施した研究は最大かつ最も厳格にコントロールされており、したがって最も大きな期待が寄せられていた。「レムデシビルの有効性について何も明らかになっていない研究結果がすでにたくさん出ています。このため、適切に実施された大規模臨床試験から得られたNIAIDのデータは非常に重要です」と、ボストン大学国立新興感染症研究所特別病原体ユニットの医療ディレクターで感染症専門医のナヒード・バデリアは言う。バデリアは新型コロナウイルス感染症のレムデシビル臨床試験には、一切関与していない。

バデリアは、新型コロナウイルスに対して効果のある最初の薬剤の発見は、一大事だと言う。しかし、NIAIDのファウチが記者会見で説明した内容しかわからない状態で、レムデシビルがその最初の薬剤であるかどうかを明言することには慎重だった。この発表方法についてバデリアは、「いまは非常事態です」と言う。「通常のデータの発表方法とは完全に異なります」

科学者が望むのは、ホワイトハウスの記者会見で語られる統計値のハイライトではなく、データの表と補足数値を確認することである。

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https://wired.jp/2020/05/02/early-remdesivir-data-for-covid-19-is-finally-here/