新型コロナウイルスはだれにでも感染する。国、性別、職業に関わらずだ。当初は子供にかかりにくいともされたが、中国での最新の数値を見ると18歳以下も成人と同程度に感染することを示している。

 ただし不思議なことに、新型コロナに感染した子供はあまり重症化することがない。感染したとしても、小児患者の90%以上は軽症か中等症、あるいはまったく症状を示さない。こうしたパターンは、水疱瘡などにおいても見られる。

 今のところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査を受ける人の大半は、顕著な症状が出ている人だ。今後、検査数が増えれば子供の重症化率も変化する可能性はある。それでも初期の検査結果は「子供は影響を受けにくい可能性が非常に高い」ことを示していると、米ハーバード公衆衛生大学院で感染症を研究する医師で、医学誌『New England Journal of Medicine』の編集長を務めるエリック・ルービン氏は述べる。

 これと類似のパターンは、SARSやMERSの流行時にも見られた。SARSもMERSも、コロナウイルスによって引き起こされる重篤な呼吸器疾患であり、子供たちにはほとんど影響がなかった。新型コロナウイルスとそれに抵抗する免疫系についてはまだわからないことが多いが、子供が今回のコロナウイルス「SARS-CoV-2」によって重篤な症状になりにくい理由を解明することは、病気の拡散と闘う一助となるかもしれない。

「このウイルスを倒す方法とは、人間がウイルスにどのような反応を示すのかを見極めることです」と、香港中文大学の小児呼吸器科医で、COVID-19の子供の罹患率についての研究を発表したゲーリー・ウィン・キン・ウォン氏は語る。

■免疫系の繊細なバランス

 感染症にかかると、悪性の病原体とそれに対抗する免疫系が、体の中で生物学的な戦争を繰り広げる。理想的な状況だと、免疫系が、人間の細胞に二次的なダメージをあまり与えることなく、病原体を体外に排出する。しかしさまざまな要因から、このデリケートなバランスが乱されることもある。免疫系が弱っていたり消耗していたりすると、十分に反応することができずに、侵入してきた病原菌が暴れるのを許してしまう。一方で、免疫反応が過剰に起こって、病原体そのものよりも大きな害を及ぼすこともある。

 子供よりも成人にCOVID-19の症状が強く出るのは、成人の免疫系が不十分な反応と過剰な反応の間のいい具合を見つけられないためではないかと、ルービン氏は言う。

これまでのところ、高齢者に死者が多いのは、免疫系が衰え始めているからと考えられる。成人はまた、子供とは異なり、糖尿病や心臓病などの基礎疾患を患っていることが多く、病気と闘う能力を弱めてしまう。

 一方で、未熟な免疫系にもリスクがある。なぜなら、小さな子供たちはまだ、十分な時間をかけて多様な病原菌に対する反応を発達させていないからだ。COVID-19の幼児の症例はまだまれだが、この病気と診断された2143人の子供(18歳未満)を対象とした中国の研究では、重症または重篤な症例の大半は5歳以下であることがわかっている。

 しかし、それからさらに数年間成長する間に、子供の免疫系は“ちょうどいい”状態に到達し、過剰な反応をすることなく感染症を抑制するのに十分な強さを持つようになる。成人の最悪の症例は、過剰な免疫反応によって健康な細胞までが破壊された結果であることが多いが、子供にはこうしたケースが少ないと考えられる。こうした無差別の攻撃は、たとえて言えば、家に侵入した強盗2人に対して戦車大隊を派遣するようなものだと、ウォン氏は述べている。「そんなことをすれば、村全体を破壊してしまいます」

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