がん発生の未知の仕組み解明 金大研究グループ
2020/3/26(木) 1:57
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写真)がん細胞ができる仕組みを解説する山下准教授=金大宝町キャンパス、北國・富山新聞

■■記事全文

 金大などの共同研究グループは、肝臓がんや膵臓(すいぞう)がんで見られる酵素を解析し、がん細胞ができる未知の仕組みを発見した。
仕組みがどのように起こるかを突き止めたほか、悪性のがんであるほど働きが活発であることも解明した。この働きを抑制することでがん細胞の増殖を止める、全く新しいタイプの治療法開発が期待される。

 研究には金大附属病院総合診療部の山下太郎准教授と、医薬保健研究域医学系の金子周一教授が加わる。

 がん細胞は一般の細胞とは異なり細胞分裂を無限に繰り返す能力を備えている。
正常な細胞に、「テロメラーゼ」と呼ばれる酵素が作用することで、がんの特徴であるこの能力が備わることが知られており、これに着目した治療薬の開発が長く続けられてきたが、成果が出ていなかった。

 研究グループは、この酵素に別の機能があると予想。電気泳動による解析を行ったところ、酵素が活性化する過程で、がんを抑制する遺伝子が阻害され、がん細胞が生み出されていることを発見した。
細胞分裂の無限化とは別の、がん化の仕組みが解明されるのは初めてとなる。

 さらにその仕組みを引き起こす「スイッチ」となる物質も突き止めた。「スイッチ」が入らない細胞を遺伝子編集技術で作成し、マウスを使って実験したところ、細胞分裂の無限化は起こったが、がん化が起こらないことも確認した。

 肝臓がん100例、膵臓がん50例の手術検体を分析した結果、悪性度が高いほど、この仕組みが活発で、予後が悪いことも分かった。
山下准教授によると、肝臓がんの3割、膵臓がんの5割が、この未知の仕組みによってがん細胞が生み出されているという。

 山下准教授は「仕組みを阻害する新たな薬剤ができれば、手ごわいがんの治療や、再発が起こる可能性の診断などにも応用できる。他のがんでも研究を続けたい」と話した。

 研究は金子教授が代表を務める日本医療研究開発機構の研究事業の一環で行われた。国立がん研究センター研究所の増富健吉がん幹細胞研究分野長を中心に共同研究した。成果は25日に英国科学誌に掲載された。

北國新聞社